104:直球ストレート!!!
「
「おぉ~、すげぇ!」
「ふむ、魔法とは便利なものだな」
「カービィ、こっちも焼いてちょうだい!」
この森で焚き火はやめておいた方がいい、とカービィが言うので、焚き火の代わりに、カービィの炎生成魔法を披露して貰った。
火の精霊サラマンダーのバルンを呼んでも良かったのだが、あいつを呼ぶと食事の半分がとられてしまう。
ここまでの旅で、鞄の中の食糧ストックも少なくなって来ているので、バルンを召喚するのはやめておいた。
そういえばさっき、カービィは俺の事を召喚師だと言った。
前世の記憶を辿ってみると、確かに、召喚師という名前の職業が、ゲームの中には存在していた気がする。
けれど、俺はもっぱら戦士派だったので、あまり魔法職の部類には詳しくない。
精霊召喚師と言っていたけど、正直、いまいちピンと来ていなかった。
「はい、どうぞ、召し上がれっ!」
タイニーボアーの焼肉、根菜のスープ、飲み物はエッホさんの牧場のカウ乳だ。
お決まりのメニューだけども、何度食べても美味しいんだこれが!
「はぁ……、さすがにそろそろ乾くわぁ~」
真っ金金のグレコが呟く。
「あ、清血ポーション出そうか?」
「う~ん……、私、あんまり好きじゃないのよねそれ。なんかこう、新鮮さがないっていうか。こう、首筋にガブッ! といって、野生的に喰らうのが好きなのよねぇ~」
あはははは、なんとも獰猛なことで……
未だグレコの恐ろしさを知らないギンロとカービィは、キョトンとした顔でグレコを見る。
「そういやモッモさん、さっき何言おうとしてたんだ? 僕は神様の~、とかなんとか」
あ、そうだったな……
カービィに全て打ち明けようとしてたんだった。
しかし、カービィの言葉を聞いて、グレコは小さく首を横に振った。
話す必要はない、そういう事だろう。
「あ、えと~、僕は神様のこと信じてるんだ~って、言おうとしただけ~」
はははと笑って、ごまかす俺。
「なんだそんなことか! おいらも信じてるよ!!」
ニッコリと笑うカービィ。
あぁ……、またしても嘘をついてしまった……
くぅ、嘘をついてはいけない病が俺の胸を締め付けるぅっ!?
「しかし、やけに静かな森だなここは。魔物の一匹もおらんとは……」
ギンロが良い感じに話を逸らしてくれた。
「もっと北にはウヨウヨいるぞ。ここは、ここだけは、木々に守られてるんだ」
カービィの言葉に、改めて周りを見渡す俺たち。
生い茂る木々はまるで、巨大な肉食魔物を通さないようにと、密集して生えている。
今俺たちがいる場所も、四人で座るのがやっとなほど狭い空間だ。
ただ、意味もなく密集しているのか、何かを守るために密集しているのか、それは俺たちにはわからない。
「とりあえず、早く食事を済ませましょ。バーバー族たちを叩き起こして、槍の在り処をサッサと聞かなくちゃ。こんな森で野宿なんて、さすがに無理だしね」
うん、確かにね。
こんだけ木々が密集していちゃ、テントも建てられないものね。
俺たちは、グレコの言葉に賛同して、昼食を口の中へとかき込むのだった。
ペチッ、ペチッ、ペチペチッ!
「うがぁ……?」
グレコに、その青い頬を叩かれて、目を覚ます一匹のバーバー族。
その大きな瞳に俺たちが映り込むと、彼はすぐさま暴れ出した。
「ぬぎゃっ!? そとのもの! これはっ!? はなせっ!! はなせぇっ!!!」
彼が大声を上げているというのに、周りの仲間たちは未だスヤスヤと夢の中。
カービィの眠りの魔法はかなり強力らしい。
「ねぇ、聞きたい事があるんだけど?」
……始まったぞ、グレコ様お得意の尋問だ!
「ぬぬっ!? だまれっ! そとのものめっ!!」
爬虫類独特の大きな目をカッ! と見開き、大きな口をガッ! と開くバーバー族。
こういう顔、見たことあるな、前世の恐竜映画で……
映画のものに比べると、バーバー族のそれは、随分可愛らしくはあるけれども。
「あなたたち、オーベリー村の倉庫から槍を盗んだでしょ? どこにあるの??」
「やり!? ぬすんだが、いえぬ! やりは、かえさぬ!!」
うん、どうやら嘘をつくのが苦手なようだねバーバー族は。
盗んだことをあっさり認めた。
「そう、返さないのね。わかった、返さなくてもいいから、どこにあるのか、場所を教えてくれない?」
バーバー族の特性を瞬時に感じ取ったグレコが、とても意地の悪い質問をする。
返さなくてもいいって……、嘘にもほどがあるぞ。
「ぬぬぬっ!? やり、われらのむら、かくしてある。しかし、やり、われらにひつよう。だから、かえさぬ! かえせぬ!!」
なるほど、どこかにバーバー族の村があるんだな。
「そう、じゃあ……、村はどこにあるの?」
わ~お、直球ストレート!!
「なぬっ!? ぬぬぬ……、それは、いえぬ! いえぬっ!!」
グレコのチクチクした質問に、なんだかバーバー族が可哀想になる俺。
その後も、いろいろと言葉を変えて、グレコは村の位置を聞き出そうとしたが、バーバー族は、それだけは断固として言わなかった。
「はぁ……、仕方ないわねぇ……。モッモ、あなたの出番よ!」
……え、俺っすか??
「あ、でも……、グレコが聞いても言わないんだし、僕が聞いても言わないと思うなぁ……」
「違うわよ。ほら、望みの羅針盤を使うのよ」
あっ! な~るほどっ!!
グレコは俺よりも、神様アイテムの使い道に長けてるなっ!!!
服の中にしまっていた望みの羅針盤を取り出し、念じる俺。
……バーバー族の村はどこですか??
すると、金の針は、北東へと傾いた。
世界地図を出し、現在地を確認する。
どうやら今いる場所は、崖からさほど離れてない、森の西側だった。
「よしっ! じゃあ、行きましょうかっ!!」
「おぉ~!!」
グレコの号令で、俺たちは歩き始めた。
俺が先頭、後ろにグレコとカービィ、ギンロは最後尾を縛られたままのバーバー族を抱えて歩く。
この時カービィが、注意深く俺の全行動を監視していたことに、俺が気付くわけもなく……
俺たちは、迷いの森の更に奥へと、足を進めて行った。
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