10:「テレポーーートッ!」

 さっきまでの不安はどこへやらだ!

 神様万歳っ!! 


(↑さっきまでは自称神の少年とか呼んでいたくせに)


 神様によって、なにやら封印を解かれた俺は、つい五分前まではかな~りフラフラしていたのだが……

 今は、これまで一度も感じた事がないほどに、体中が力に満ち満ちている。

 今筋トレすれば、全身筋肉ムッキムキのスーパーマンになれそうだっ!

 前世の記憶とやらは全く思い出せないものの、なんだかいろんな知識が増えた様な気がするし!!

 頭の中がスッキリと整理され、さらに引き出しが豊富になった感じだっ!!!

 今ならもっと良い家が建てられそうだし、もっと美味しい作物が育つ畑が作れそうだっ!!!!


 そして何より、神様の魔法アイテム!

 隠れ身のローブに、導きの腕輪、望みの羅針盤と、時空の指輪。

 これらをちゃっかり装備した俺は無敵!!

 もはや旅に出る事に関しては微塵の不安もなく、いつでも出発してやるぜぇっ!!!

 テンションアゲアゲだぜぇえっ!!!!

 ヒャッハーーーーーー!!!!!


『ついでに、これも少しいじっておこうか』


 そう言って、神様は地面に置かれている俺の鞄に掌を向け、なにやら光を発した。

 すると、今の今まで中身が多すぎてパンパンだった鞄が、スッとスマートになったではないか。

 なんだろうなと思い、持ち上げると、まるで空のように軽い。


 WHY?


『よし、これでいい。君の鞄の中を異次元空間と繋げておいたよ。繋がっている先は僕の管理する空間だから、遠慮なく使うと良い。こうしておけば、無限に物を入れられる。もし中身を取り出したい時は、取り出したいものを頭に思い浮かべれば、簡単に取り出せるからね』


 わおっ!?

 俺の鞄が魔法アイテムに早変わりっ!??

 神様万歳っ!!!


「ありがとうございますっ! 神様っ!!」


 キラキラとした眼差しで、神様を見つめる俺。


『うん。じゃあ、後はよろしくね。地図を見ながら、世界を旅して、神々の様子を探ってきておくれ。僕はここ、聖地で待っているからね』


「はいっ! お任せ下さいっ!!」


 小さな拳でドンッ!と胸を叩き、鼻息荒く俺はそう言った。

 すると神様の体は、柔らかい光に包まれて、フワリと宙に浮き、スーッと空へと舞い上がっていく。


『健闘を祈っているよ。……あ、そうだ。僕は一度地上に降りると、次は一週間後にしか降りられないんだ。だから、もし何か報告があれば、一週間後にまたここで。いいね?』


「わかりましたっ! また一週間後にっ!!」


 大きく手を振って、俺は満面の笑みで神様を見送った。

 







 さてさてさて、どうしようかなぁ?


 早速、世界地図を広げて、どこに向かって旅に出ようかと悩む俺。

 地図上にある黄色の光はかなり数が多い。

 この世界には、沢山の神様が存在するようだ。

 これ全部を回るとなると、相当時間がかかるだろうが……


 うん、きっと大丈夫だ!

 なんせ俺には、神様から貰った魔法アイテムがあるんだからな!!

 俺に不可能はないっ!!!


 隠れ身のローブを着れば、魔獣のような恐ろしい敵には出会しても、おそらく見つからない。

 もし見つかって、最悪殺されたって、時空の指輪で生き返れる。

 望みの羅針盤があれば、欲しい物に向かって一直線だ。

 それに、ホームシックの心配もなくなった。

 導きの腕輪と、導きの石碑(通称:爪楊枝)があるんだからな。

 これを使えば、ちょっと遠出したって、一瞬で村に帰れるんだぁ~い♪


 神様に貰った魔法アイテムと、前世の知識があれば、もはや俺に怖いものなどない!

 わっはっはっはっはっ!!

 それに……、なんたって俺はピグモルだ。

 世界最弱だろうがなんだろうが、身を隠す事には最も長けた種族なのだ。

 神様が言っていたように、俺の使命は偵察をすることであって、決して戦うことではない!!!


 それなら絶対にできる!

 俺は、やってみせるぞぉっ!!

使命を果たし、村のみんなを救うんだっ!!!


 決意を新たに、意気揚々と、軽くなった鞄をごそごそと漁り、飴玉を一粒取り出して口に頬張る。


「うぅ〜ん♪ あっま~い♪」


 この飴玉は、村で採れるトマシュという甘い野菜と、ビーンという虫の巣から取れる蜂蜜のようなものを混ぜて乾燥させたものだ。

 フレッシュで濃厚な味わいに、村のみんなも夢中なおかしの一つだ!


 口の中で飴玉を転がしながら考える。


 でもやっぱり、とりあえず……、一度村に戻ろうかな。

 長老に、これまでの事を全て報告したほうがいいだろうし、北の山々に行ったきりで帰らなかったら、みんなに死んだと思われそうだ。

 ……いやいや、そりゃ困る。

 母ちゃんに心配をかけるのは嫌だしなっ!

 そうと決まったら、早速、導きの腕輪で帰ろう!!

 

 しかしあれだな、掛け声が欲しいよな……、う~む……

 やはりここは、あれかな?


「テレポーーートッ!」


 張り切って声に出し、腕輪の青い石に手を当てる俺。

 だがしかし……


「ん? あれ?? テレポーーーーートッ!!!」


 腕輪は一切反応しない。


 んん? 何故だ?? おかしいなぁ???

 貰って早々に壊れたのか、はたまた不良品なのか????


 …………はっ!?!?


 そして気付く、最悪の事態。


「あっ! そうかっ!! 村には石碑がまだないっ!!!」


 なるほどなるほどそういうことか。

 うんうん……、うん?

 じゃあ俺は、どうやって、村に帰ればいいのかな??

 ……ありゃりゃ???

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