第7話 東京特許許可局
「我々としても、本件をとても重く見ています。我々としては打てる手ならできるだけ打っておこうと考えています」
そもそもがこんな難問を解くことに特化した人などそもそもが存在しない。
だからこそさまざまな分野の専門家を呼んでみたとも言える。
3人寄れば文殊の知恵ならば7人寄ればか。
「というのも、今回の発見により彼らと交渉する必要性が増しましたので」
「技術の知的財産権をどうするか、だろ」
そう聞いたのは
「そのとおりです」
「光回路にしろ、室温超電導にしろ、現代の科学技術のはるか先を行くものだ。技術を独占できれば天文学的な金を生み出すだろう。その技術が誰のものなのか、出処がはっきりしない限りどうにもならんね」
「宇宙人さんのものだったとしたらどうなるの?」
「さぁ、私は詳しくないのでわからんよ。私よりそちらの先生か政府の人の方がお詳しいだろう」
宇宙人の技術を独占なんてできるのだろうか。そんなずるいこと。
「私に聞かれましてもね、大雑把なことしか言えないが。許してもらえませんでしょうな。世界をひっくり返すような技術を日本が独占するようなことになれば、世界平和のためだのなんだのと言いがかりをつけて、二束三文で買い叩かれておしまいでしょう。ま、交渉次第でなんとかならんこともないけども」
「交渉ってだれと?」
「宇宙人さんとだよ。宇宙人さんが日本とだけ契約したいと申されるなら、従わないわけにはいかないだろう? 相手は我々より高度なテクノロジーを持った方々だ、下手に逆らうわけにはいくまい?」
「なるほどねー」
「だからこそ、我々としては早急に彼らと接触を持ちたいのです。できれば秘密裏に」
宇宙人と技術の独占について契約できれば一発逆転を狙えるということか。
純ちゃんが言っていたのはこのことなのだろう。
確かに国自体が潤えば大学を潰す計画なんて白紙どころか、予算増額も夢ではないのだろう。
それから調査に必要な機器や調査方針の議論が行われた。
私も考古学者としてわずかながら役に立てたはずだ。
明日火曜日から金曜日にダイビング講習を受講、土曜日は各自調査の準備を行い岡山県に集合し、最終ミーティング。日曜の朝調査へ向かうとのことだった。
必要な機材はすべて政府の方で準備して現地に持っていくとのことだ。どんなものでも用意すると言っていた。さすが政府。
地方から来ていたのは私と京都から来た
私と
「今日はお疲れ、頭がぱんぱんだよー」
「お疲れ、いい発表だったよー」
「純ちゃんこそ、最初から最後まで、超できる人って感じで凄かったよ」
「そう見えたなら良かった。これでも緊張しっぱなしなんだよ。いろいろ前例がないからね」
それはそうだ、こんな難題に余裕を持って取り組める人などそういないだろう。純ちゃんと夕食を食べたかったが、彼女にはまだ仕事が残っているのだそうだ。
ホテルのレストランで食事をとり、すぐに寝ることにした。昨日遅くまで発表の準備をし、始発できたので眠い。この年になると夜更かしが堪えるようになってしまった。
明日は久しぶりの水泳だ、体力を回復させないと命に関わりそうだ。とっとと寝てしまおう。
翌日は都内のダイビング教室で、皆と講習を受けた。最初はギクシャクしていた皆だったが、講習を進めるうちに打ち解けてきた。お人形さんは私より1つ上で、
男性陣は
2日目からは海での講習に入る。洞窟ダイビングは初心者には難しいそうで、普通の講習と異なったメニューらしい。普通がわからないので違いがわからないのであるが。純ちゃんは別な仕事があるらしく、ダイビング講習には来なかった。
海での実習は体力を使うから終わった後は倒れるように眠る3日間だった。そんなこんなで、あっという間に日はめぐり土曜日。一旦自宅へ帰って必要な道具と着替えを補充し、岡山県へ。
そしてついに、日曜日の朝がやってきた。
岡山港からチャーターしたクルーザーで現地に向かう。流石にお人形さんはフリフリの服装ではなく、チェックのショートパンツにベストというボーイッシュな格好だった。これはこれで似合っている、少年のようだ。
そして、
なんと不可思議なメンバーだろう。しかもこれから宇宙人を探しに行くんだよ私達。んなこと誰が信じてくれようか。
船で現地まで約30分、夏休みにクルージングとダイビングとは優雅なものだ。
クルーザーは軽快に波を切り進んでいく。風が気持ちいい。
砂浜には海水浴を楽しむ人達。平和な海だ。四国と本州に挟まれている瀬戸内海は水深も浅く波も穏やかだ。遠くに瀬戸大橋が見える。
とても人の手で作ったとは思えない大きさだ。あれすら私には宇宙人の技術に見える。縄文時代の家屋なら、私でも作ることができるだろう。だがあの巨大な構造物を作ること、その一部分の作成方法すらまったく想像できない。
目的地の島は江戸時代から明治時代にかけて石材の掘削などを生業とする住民らが居住していたが、現在は無人島となっている。くの字型をしており、切り立った崖が外周のほとんどに見られる。問題の入り口はくの字の下の部分に当たる所の、崖下の海中にある。
船の中で着替えて、教わった手順通りに準備を行う。流石におとといまで何度も習ったことだから覚えている。
「それではみなさん、よろしくお願いいたします。第一に皆様の体のことをお考えください。決して無理はなさらないようにお願いいたします」
純ちゃんが言った。皆の反応は薄く、言葉が少なくなっている。
私も緊張していた。難しい洞窟ダイビングに対する不安だろうか。
多分違う。震えていた。
なぜだろう、やはり私は小心者だ。みんなも怖いのだろうか。
やはり未知は恐怖だ。
震えは海中に入り、他に集中することができたので収まった。
現地までは300メートルほど海中を移動する。すでに自衛隊のダイバーがロープを張ってくれているので、ロープを伝って移動する。現地までライトを設置しておいてあるので、暗い中進む必要はない。
皆順番に進んでいく、自衛隊のダイバーがリードしてくれるので安心してダイブできる。海中洞窟は人2人分が泳げるぐらいのスペースが続いていて、たまに狭い部分があった。
ここで光を失うと身動きが全く取れなくなりそうだ。海中を見てみたが、遺物らしきものは見つけられなかった。海底を掘れば出てくるかもしれないな。
ついに海面から顔を出すと、いままでと同じぐらいの洞窟が2メートルほど斜め上に続いていた、その先は広くなっているようだ。
恐る恐る、岩場を登る。
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