3

 四人は汰稀の家に来ている。と言っても家の前。中には入っていない。

「主の妹、本当に家にいるんだな?」

 そう言ったのは彼方。汰稀は唾を飲み答えた。

「そのはず。心湊はほとんど家から出ないし。危険な今は、余計出ないと思う」

「わかんねえよ。あの写真が主犯たちの集合写真で、写ってたのが心湊ちゃんなら、いないことも考えられる」

「普通にそういう事を言いたいんだろう汰稀は。いなかったら心湊嬢は黒だと。彰男よ、主は馬鹿なのか?」

「え、いや、ええ……」

 少し悪くなりつつある空気から逃げるように、木葉フォローを入れる。

「と、とりあえず中に入りましょう!」

「うん」

 返事をし、汰稀は歩き出した。木葉もそれに着いていき、残りも遅れて追った。

 数歩のところで、木葉が何かを蹴った。

「え?」

 恐る恐る足元を見るとそこには……。

「きゃっ! ……死体……」

 その声に汰稀は振り向き、冷めた目で木葉の足元の死体を眺める。

「あ、それ……」

「木葉。主は我と共にアンデッドを殺してきて、流石に慣れたと思っていたが」

「慣れませんよ! 遺品回収の時も怖かったんですから!」

「そうだったのか……。苦しい思いをさせて済まない」

「いや、いいんです。仕方のないことですし」

「そうか」

 彼方は合図地を打つと、死体を見て続けた。

「して、その死体の遺品は一応回収しておくか?」

「辞めておけ」

 そう言って彰男は、あごで汰稀を指した。汰稀は涙目になり俯いている。それを見て彼方と木葉は悟った。

「ああ、そういう事か」

「……」

 黙り続ける汰稀の隣行き、彼方は声をかける。

「……その、…………済まない」

「いや、いいんだよ」

 汰稀は俯いたままだ。

「……。今日の我は、謝ってばかりだ」

「謝らないよりはいいんじゃないか?」

 彰男のその言葉を聞いて、汰稀は顔を上げ言う。

「どっかの誰かみたいに、先輩スープこぼしても謝らないよりはね」

 汰稀のその目は、嫌味を言う時のものだった。立ち直れたのか。

「いや、あれは……」

「先輩に対しての無礼を感じていないとは……」

「彰男さん、最低です」

「悪かったとは思ってるよ!? ただ、そういう空気じゃなかったって言うか……」

「悪いことしたのに謝る空気じゃないって、どんな空気だったんですか」

「アキオクンサイテー。サイアクー。キモーイ」

「最後のはお前にだけは言われたくねえな!」

「同感だな」

 彼方が頷く。

「わかってても傷つくなあ」

 ハハハと汰稀は笑った。それを見た木葉が、心配げな表情で言う。

「汰稀さん、普通に話してますけど大丈夫なんですか?」

「滑舌こと? ちょっと大丈夫じゃないかな」

「あ、いえ。心の方です」

「ああそっち。親なら……大丈夫。ケジメつけないとね」

「汰稀らしくねえな。ケジメとか」

「主、本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だって。それよりも、早く家に入ろうよ」

 汰稀はそそくさと家の中に入っていった。

「……大丈夫ではなさそうだな」

「今はまだ……な」

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セブンズ・ペイン 窓雨太郎(マドアメタロウ) @MadoAmetarou313

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