死ぬべきは私だった

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「おい汰稀たいき、説明しろよ。どういうことだ? 親は野高のだかに行ったんじゃなかったのか?」

 彰男あきおは汰稀を責めるように、汗を流しながら言った。汰稀は手で蚊を払うようにして答える。

「自分で殺したなんて言えないでしょ」

 そして彼方かなたを見る。

「それより君、なんで殺した人数を当てられたの?」

 彼方は迷わずに答えた。

「人から聞いたんだ。ここに来る途中、噂を聞いてな。「木刀持った男がゾンビになった親を殺したらしい」と」

 汰稀は自分手作りの木刀を手に持つ。

「こいつで判断したの? これ、ただの木の棒にも見えると思うけど」

「いや、よく出来ている」

「そりゃどうも」

 木刀をしまい、ため息をつく。

 木葉このはがラーメンをすすったまま挙手して言う。

「あの、二人はこれからどうするつもりなんですか?」

「俺ら? いや……。汰稀、どうするんだ?」

 彰男は残っていた漬物を口に入れ、汰稀を見る。汰稀ラーメンのスープを飲む。

「特には決まってないね」

 それを聞くと、彼方が汰稀の隣に座り言う。

「それでは、我々と共に行動しないか? 眼鏡の方はわからないが、お前はそれなりの戦力になるだろう」

 おしぼりで丁寧に口を拭き、汰稀が答える。

「別にいいけど。……彼方達は何か、目的とかあるの?」

 今度は少し考える。

「我々は、今回の事件の主犯を探しだす。それが目的だ」

 彰男は再び驚く。

「主犯を……探す?」

 店内は沈みかけの夕陽に照らされ、窓の外には丁度汰稀の髪と同じような色の海が広がっている。

 その夜はラーメン屋で、避難客と共に夜を越した。

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