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「ふう……。美味しい」

「生き返るわぁ」

 先程の女二人が、出されたラーメンを味わって食べている。和服の方は彼方かなた、銃を持った方は木葉このはというらしい。

「そんなボロボロで……。若え女子おなごまで苦しんでらったな」

 おっさん客が慈悲の目を向ける。

「おめんだ、あのゾンビからしんたけ追われてたったな」

「いえ、実は……」

 おじいさんが少女達に話しかけると、木葉が言いずらそうに声を漏らす。代わりをするように、彼方がラーメンを飲み込んでから言った。

「我々はあのアンデッド達と戦っていたのだ」

 店中から「戦った?」「こんな女子が?」「スゴい」と言った声が聞こえる。彰男と汰稀も、素直に感心した。

「あの二人も、俺らと同じく戦ってたんだ」

「いや、戦ったの俺ね?」

 彰男の言葉に汰稀が突っかかる。そこに、彼方が彰男達を見て声をかけた。

「おい」

「ん?」

 彼方は彰男達の前まで歩いてきて前に立つ。

「主らも我々と同じく、死地をくぐり抜けて来た者か?」

「そうだ」

「彰男はただ死地に立っただけなんだけどね」

 彼方はうつむく。

「そうか……」

 そう呟くと、再び顔を上げて言う。

「何人殺った?」

 その質問に、汰稀が自慢げな顔で即答した。

「五十人」

「ドヤ顔で言うことじゃねえし、絶対嘘だろ」

「そう言うお主はどうなんだ。何人殺った?」

「百だ」

「お前もドヤ顔で嘘つくなよ」

「あ、「も」って言ったな? 嘘って認めたな?」

 汰稀と彰男は睨み合う。彼方は目をつぶり少し考えると、悟ったように言った。

「そうか。だいだいの頭が三人で眼鏡の方は零人か。三人の方は、その内二人が親。……苦しかっただろう」

 それを言われ、彰男は驚いた。

「お前、なんで……。ってか汰稀、親は野高に行ったって」

「……」

 汰稀は真顔で、ずっと黙っていた。

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