第28話 触手だからって嫉妬しないと思うなよ
置いていって悪かったと思うがラコクオー、よく追いついたな。どうやって見つけたんだよ。
「しかしここまでよく来れたな」
「ここにいるとは思ってなかった。図書館を目指していたからな」
「なるほど。しかし、学園都市のあたりは封鎖されてるだろ。魔物によって占拠されたんだよな?」
「……それだ、大変なことというのは」
大変なことってなんだよ。占拠されてて通れないんじゃなかったのか?
「魔物は占拠していた学園都市を放棄して首都に向かっている」
「なんだよ行動の意味が理解できねぇよ!」
「我もだ。図書館への道が通れるからお前たちも向かったかと思ったが」
「図書館の用事は済んだがな」
「なんと。やはり」
「空から降ってきた」
「空!?」
普通に考えたら、割とありえないルートで移動してたからな俺たち。しかし封鎖が解けるんだったら普通に行けばよかったな。結果論だけど。結果論だけど。
「とにかく図書館と必要な情報が揃って、ブレンのブレンとヴァンパイアたちの不妊もなんとかなりそうだ」
「よかったではないか」
「よくねぇよ寝れなかったんだよ!!」
「むぅ」
全くどいつもこいつも繁殖しやがって。とっとと子供ができてエサ運ぶのに苦労するがいい!
「しかし首都か……俺たちにはもう関係ないといえば関係ないが」
「いや。そんなことはない。あれはこの世界の全ての生物の敵かもしれない」
ん?なんだよこの声は。ツノが三本生えた白い馬が現れたではないか。なんだこいつ。
「私は王国騎兵団のトリッシュ。王国の女性騎士団のリーダーを乗せていた」
「女性騎士団?そんなんがあったのか」
「我が王国軍は学園都市に侵攻した魔物に攻撃を仕掛けた。しかし、液体状になった魔物には攻撃が通用しない。おまけに魔法も効果が薄い」
なんて連中だよ。恐ろしいな。
「学園都市を埋め尽くした紫の魔物と、液体状になった紫の魔物は、やがて首都を目指し始めた。我が軍も反撃をしたが、残念ながら紫の液体に埋め尽くされて……私はこのラコクオーにかろうじて助けられた」
「うむ。驚いたがな」
「しかしながら、我が軍の騎士たちは全滅した……」
なんてこった。首都を目指しているというが、主力は壊滅かよ。首都の人間もダメかこれは。
「しかし何故それが世界の全ての生物の敵なんだ?」
「紫の魔物は、ある程度の大きさの動物や植物に付着し、その体内に侵入していく。そして思考や行動、更に体表までコントロールして……もはやあちこちが紫一色になりつつある」
日が昇ってきた時に見た光景を俺は忘れられないだろう。紫色に染まる空。そして……大地。
「信じられないが信じざるを得ないな」
「だな」
レナードもやってきた。しばしその光景を見てじっとしている。
「レナードも寝れなかった口か?」
「俺には睡眠も性欲も必要ないからな。全く若い連中は無茶をする」
「レナード、奴らの狙いはなんだと思う?」
「まだわからないがな。学園都市にでも行ってみればわかるかもしれないな」
「おい!学園都市は紫一色だぞ?大丈夫なのか」
トリッシュが叫んでいる。もう馬がなんか言っていても普通に思えているのは謎だ。
「乗ってきた軌道カプセルでも使ったらいいかもな。水もあるし、エネルギーも補充できた。あとはブレンたちを起こさないとな」
「んー?みんな早いな?」
「ブレン!昨日は寝れなかったぞ!」
「げっ!壁薄すぎだろ」
「壁じゃない、声デカすぎなんだよ特にエウロパが!」
本当にあんな声出してたら野獣もびっくりして近寄らんわ。野獣か。野獣なのか。
「すまん、反省はする」
「繁殖はやめないのかよ」
「それはやめないが対策は考えないとな。プライバシーもクソもない……」
「ブレン、皆を起こしてくれないか?」
「どうしたレナード?」
「私に考えがある」
ブレンは寝ていた一同を起こしてきた。髪とか匂いとか凄いぞお前ら。思わず言ってしまったよ俺。
「ブレンも含めて身体洗ってこい!」
「えっ、ぼくの臭いってそんなに酷い?」
「酷いから言ったんだ!」
ブレンとエウロパ、ヴァンパイアたちが身体綺麗にしているうちにファブリーもやってきた。一同が揃ったところでレナードが機械を操作する。
「これからお前たちに武器を渡そうと思う。俺が考える最強の武具だ」
そういうと、また空から流星が降ってきた。一同唖然としているが、よく考えてみると俺たちアレに乗って降りてきたんだよな。流星は逆噴射して近くの空き地に着陸した。
「まずはブレン」
「なんだろ」
「この剣は窒化炭素の結晶で覆われたタングステンセラミック複合材からなる」
「?????」
「ぼくもよくわからない」
ブレンはその金色に輝く剣を手に取った。凄い剣なんだろうなきっと。
「そしてファブリーには同じ素材の槍だ」
「ありがたく使わせてもらうわ」
「次にエウロパ」
「ぼく?」
一本の杖が出てきた。……杖って光ったりするっけ?
「この杖はナノマシン演算術式……おっと魔法だったか、の並列処理が可能だ。つまり一度にたくさん魔法が撃てる。なお魔法は空から降る」
「空から?なんでだろ」
「魔法演算を軌道塔から照射するからな。最大で20倍の魔法が使える」
「すごすぎだよ!」
レナードが次に何か液体を取り出した。
「これは生体ナノマシンの強化キットだ。始祖たちはこれで戦闘力の引き上げもできるだろう」
「何から何まですまぬな」
「あとそちらのおうまさんたち用のプロテクターと、各人の防護服、アラミド繊維とセラミック、カーボンファイバーの複合材だ」
あまり見たことのない服が全員分カプセルの中にあった。女性たちが中で着替えるようだ。ん?
「レナード」
「どうした触手」
「俺の、分は?」
「ない」
ないのかよ畜生。俺だって触手だからって武器とか持ちたいんだよ!ん?なんか小声でトリッシュとラコクオーが何か言っているぞ?
「おいそこ」
「我に何か?」
「ひょっとしてデキてんのか?」
何赤くなってんだよこいつら!畜生どいつもこいつも繁殖するわデキるわで!いい加減にしやがれ!
「触手」
「なんだレナード」
「嫉妬しても、好みの相手は手に入らないぞ」
わかってるわそのくらい。全くこれから大一番だってのに締まらないなぁ俺たち。
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