4.バトル 3

 ドンドンパッ!ドンドンパッ!


 次の試合の準備が整った瞬間、曲がいきなり変わった。

 そして、その曲に合わせて、テント内から、校舎から、足踏みと手拍子が鳴り響く。


 どうやら、二階で見ているクロウニーのメンバーにもチャラ男たちの話は伝わっているらしい。

 彼らは凄惨な笑顔で、会場を見下していた。


 その視線の先には、武器を手にした四人のチャラ男。彼らは、周りの雰囲気に少しビビったようだったが、それでもまだ笑えていた。


「さぁ〜、盛り上がって来ました、ガチマッチ!お次は飛び入り参加の二年生軽音チーム『マギ・マフィア』だぁ!」

 クロウニーのメンバーは、敵意むき出しだったが、それを悟られないように、司会のサダが「盛り上がっている」と上手く誘導する。

 見ていた観客も、足踏み・手拍子にはびっくりしたようだが、すぐに演出の一つと受け入れ、自分たちもそれに加わり始めた。


 司会のサダが、相手チームの紹介をしている間に、真琴たちは作戦を話し合った。

 いや。それは話し合いというよりは、意思確認だった。


「まずは?」

速攻ソッコーだな」

「真っ直ぐ行って」

「一気にぶっつぶ〜す!」

 にやり、と四人が同じ表情に変わった。

 先輩だろうがなんだろうが、舐められたままでは終われない。


「さぁ〜、準備はいいか!?ショーの時間だぜ!」

 サダの合図が、中庭から天へと抜けて行く。

「Ready go!!」




 開始の合図とともに、真琴たちは一斉にスタート地点から飛び出した。

 いつもなら、真琴の偵察を待って後ろから付いてくるクロとサイトーも、今回は全力で敵陣ピンクエリアへと突っ込んで行く。

 どうせ彼らは、「ダサい」と言い訳をして、走らないだろう。


 真琴たちの読みは当たり、彼らが接敵したのは、敵陣ピンクエリア奥深くだった。

 そこを陣形も何もなしで、てろてろと歩いていた。


 戦いの火蓋を切ったのは、コウキだった。

発見はっけ〜ん

 いつもよりややテンションを落として、チャラ男たちの真正面へと躍り出た。


「ウハwww全りょうわっ!」

 半笑いでろくに構えもしなかった長距離水鉄砲スナイパーに、容赦無くビューっと水をかける。


 本当は、ライフである胸元さえ狙えばよかったのだが、コウキはわざと顔にかかるように水を撃った。

「うわ!冷て!」

「あ、すんませ〜ん」


「ピンク、長距離水鉄砲スナイパーDeathデス!」


「だっせぇwww」

 周りのチャラ男が、一番最初に死んだ男を笑っていると、真琴たちも追いついて来た。


「おわ、来やがった!」

「撃て、撃て!」

 慌ててチャラ男たちが構えるが、スピードに乗った真琴たちの敵ではなかった。


 サイトーがバケツの強撃で、チャラ男たちを驚かし、隙を作る。

 そこに、残りの三人が一気にラッシュをしかけた。

「うわ!」

「ちょ、まっ……!」

「卑怯だぞ!」

 戦いで何をヌルいことを、と言うようなことを口々に、彼らは次々と死んで行った。


「ピンク、リュック型水鉄砲タートルバケツダッシャー二丁拳銃トゥーハンドDeathデス!開始30秒で、ピンクチームは一気に4デスだぁ!これは新記録〜〜!!」


 うおぉぉぉ!と、地響きのような歓声が聞こえる。それに、一軍メンバーは手を振って応えると、次の作戦のために、自軍グリーンエリアへと踵を返したのだった。

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