3.フェスティバル 3

「Everybody〜!準備はいいか〜!?」

 サダからマイクを渡されたハヤトが、そのよく通る声を張り上げた。

 それに合わせて、音楽もアップテンポなパーティー音楽へと変わる。


「It's party time〜!これから、学食の食券をかけた『ガチマッチ』が始まるぜ〜」


 その声に、クロウニーの面々が野太い声と、足踏みで応える。

 その雰囲気につられて、見学していた者達からも歓声が上がった。


「食券を守る我が精鋭達を紹介するぜ!まず、その水の勢いでごり押し!バケツダッシャー・サイトー!」

 ハヤトに呼ばれたサイトーが戦場フィールドへと躍り出る。そして、中庭で見ている観客へと、そのバケツの中の水をぶっかけた。

 中央から観客までは遠かったため、直撃する者はいなかったが、それでもきゃあきゃあ言いながら、観客は逃げた。


「狙った獲物は逃がさない!驚異のエイム力!長距離水鉄砲スナイパー・クロ!」

 クロは、校舎近くの障害物へと飛び乗ると、校舎で見ている観客に向かって、水を発射した。

 二階で見学していた者達が、歓声を上げながら、窓へと身を隠す。


「早撃ちなら任せとけ!二丁拳銃トゥーハンド・マコト!」

 真琴は名前を呼ばれると、サイトーの元へと駆け寄った。途中で、持っていた水鉄砲を空中に放り投げ、くるりと一回転してキャッチする。その大道芸じみた動きに、周りから感嘆の声が漏れた。


「そして、スピードとスタミナ、どちらもピカイチ!リュック型水鉄砲タートル・コウキだぁぁ!」

 コウキは戦場フィールド中央、真琴の背の高さほどの障害物へと飛び乗ると、イエ〜!と言いながら、水を発射した。


「さぁ、この四人に勝って、食券を手に入れるチームは果たしているのか!?我こそは!と言うチャレンジャーを俺たちは待ってるぜ〜!」

 そうハヤトが観客を煽る。その間に、真琴たちはグリーンチームの出撃予定地点へと向かった。


 「ガチマッチ」とは、ハヤトの説明した通り、学食の食券十枚綴りをかけた戦いだった。


 そのルールは、「野良マッチ」とは少し異なる。

 まず、一回死ねば終わりの「野良」と違い、「ガチ」のほうは、各チームにライフ10が用意されている。つまり、一回死んでも、復活できるのだ。

 そのライフ数に合わせて、戦闘時間も10分に伸ばされている。

 体力的にもハードで、それ以上に戦術・連携が重視されるゲームになっていた。


 直前まで「ガチマッチ」のメンバーだと言うことを知らなかった真琴は、責任者の春樹に詰め寄ったが、春樹はどこ吹く風だった。

「昨日まで、あんなに練習してたんだから、大丈夫だって」

 と気楽な感じで押し切られてしまった。


 ちなみに、登場時のパフォーマンスは、長谷川と築島と競って練習していたものだ。今思うと、二人とも春樹からの指令を受けていたとしか思えない。

 完全にめられた、と思いながら、真琴はスタート台に立った。


◇◇◇


 ガチマッチの対戦者はすぐに現れた。

 最初の対戦チームは、三年生の体育会系らしい男四人の「勇者ヨシヒロとその仲間」だった。


 運動神経も、仲も良さそうな四人に、真琴の緊張は高まる。

 それを察したのか、真琴のバディであるサイトーが、ぽんぽんと真琴の肩を叩いた。

「今まで通りやれば、俺らの連携に勝てるやつはいないって」

 その言葉に、真琴は頷いた。


 学食の食券という大きなものを背負わされたが、文化祭まで何日もデモンストレーションしてどう動くかは頭に入っているのだ。その通りにすれば、三年にだって負けないはずだ。


 クロウニーのメンバーは、年上の相手と戦い慣れているのだろう。

 ちっとも緊張しているように見えなかった。それを、頼もしく思う。


「思いっきり、走り回るから、付いてきてよね」

 真琴がニヤリと笑ってサイトーを見上げると、彼もニヤリと笑い返してくれた。


「ヤローども、準備はいいかぁ!?」

 ハヤトの声量に、マイクがキーンとエコーする。そのエコーの終わらない間に、戦いの火蓋は切って落とされた。


「Ready go!!」

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