3.フェスティバル 2-2
勇吾が気がついたのは、どこからか腰にクる声が聞こえて来たからだ。
その声の方を見ると、麗の腕の中で、真琴が真っ赤な顔をしていた。麗の手が、真琴の腹の上で
「んっ、ウララちゃんっ……!」
「マコト……」
「ちょーっと待った!」
瞬発力は、勇吾より優の方が優れていた。
さっきまで男達に囲まれて、きゃっきゃ笑っていたのに、一瞬で二人の間に割って入っていく。
「なんなの!?この急な18禁展開!発禁にでもするつもり!?」
あのまま放っておいたら、十八禁なんか軽く飛び越えて行ってしまいそうだった。
優に遅れることわずか。
麗から引き剥がされた真琴は、うまく体に力が入らないのか、駆け寄った勇吾の腕の中でくったりしていた。
「――なによ。うるさいわね。ちょっとスキンシップしていただけじゃないの」
「そうなのか、マコト」
「……???スキンシップ……なのかな?」
勇吾の腕の中の真琴は、疑問符をいっぱい浮かべていた。自分が何をされたか、まだよくわかっていないのだろう。
そこに麗が畳み掛ける。
「そうよ。ただのスキンシップよね。女の子同士なら、あれくらい普通よ」
「スキンシップ……?普通……?」
「洗脳しようとするな」
「普通?あれが?」
勇吾と優の非難に、麗はけろっと言い返した。
「ちょっとお腹プニプニしてただけじゃないの」
「お腹ぷにぷに!?そんなかわいいものだった?」
優のもっともな指摘に、麗は開き直った。
「やぁね。これだから、思春期の男は。何でもかんでもエッチな方向に持っていくんだから……」
「マコトちゃんにあんな声出させといて、しれっとそんなこと言うんだ!?」
「あんな声って、どんな声よ。普通の声だったじゃない。それを変な風に取られちゃ、私も困るわ」
「お腹ぷにぷに……?私がえっち……?うぅ……」
優と麗の言い合いに、真琴が混乱しだしたので、勇吾は真琴の頭を抱えるようにその耳を塞いだ。
「もういい。お前は聞くな」
そして、真琴のジッパーを元どおり一番上まで上げる。
肌が隠れたことで、真琴は少しホッとしたようだ。
「顔が赤いぞ。洗いにいくか?」
と問うと、素直に頷いたので、勇吾は真琴の手をとって、水道へと歩き出した。
二人の背後で、麗と優はまだ、言い合いをしている。だが、どこか楽しそうな様子に、放っておいても大丈夫だと勇吾は思った。
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