2.ディテクション 4
「お〜!おまえは!」
素っ頓狂な叫び声が聞こえて、真琴は思わず振り返った。振り返った先には、学ランを着た金髪男。そいつがびっくりしたような顔で、真琴を指差していた。
「……ハチ子ぉ!」
「忠犬じゃないし!」
学ラン男の言葉に、ツッコミを入れると、彼は破顔した。
「いや〜、いいツッコミや!」
このノリがこっちの奴らには足りひんねんな〜と、馴れ馴れしく話しかけて来る。
「えーっと、この間、ユーゴに助けられてた人だよね?」
この学ランと関西弁で間違えようもないが、真琴は確認した。そう言えば、自己紹介すらしていなかった。
お互いに自己紹介をした後、翔が真琴に訊ねた。
「で?自分はこんなとこで何してんの?」
こんなところ、とは、ホームセンターの入り口だった。
「ユーゴ達、待ってんの」
今日は、文化祭の準備で足りなくなったペンキを買いに来たのだった。
今、ユーゴ達は会計をしているはずである。真琴は、一足先に外に出ていた。
「飼い主待ってんのか。やっぱり、忠犬……」
「だからぁ……!」
抗議しようとしたところに、向こうから男達が走って来るのが見えた。
「げっ!まだ追って来よる。ちょっと、隠れさして」
「はぁ?」
真琴が許可する間も無く、翔はホームセンター入り口の看板の裏にしゃがみこんだ。
だが、それだけでは脇から丸見えだ。真琴は仕方なく、さりげなく看板の横に立って、翔を隠してやった。
殺気立った集団は、誰かを探すように辺りを見回しながら、向こうへ去って行った。だが、真琴の影に隠れた翔には気がつかなかったようだ。
道の角を最後の一人が曲がって行ったのを確認して、翔が安堵のため息を
「は〜。助かったわ〜。あいつら、しつこいねん」
「あんた、何したのよ」
「いや、俺がちょ〜っとお
「ブチギレさせるお茶目なことって……」
看板の影に隠れたままの翔と話していたら、後ろから声をかけられた。
「マコト、待たせたな」
「何してんの〜?猫でもいんの?」
体勢的に翔が見えなかったのだろう。和也が
「……って、お前は、いつかの迷子!」
「迷子ちゃうわ!ちょっと慣れてへんかっただけや!」
真琴の足元にいるのが猫のようにかわいいものではないと気がついて、和也は嫌そうな声を出した。
「なんでしゃがんでいるんだ」
勇吾は、もっともな疑問を口にする。
「なんかね、ちょっとガラの悪い人たちに追われててね……。あれ、安土高の人……だよね」
「そうや。安土高や」
真琴が
「あいつら、最近こっちにちょっかい出してこないと思ったら……」
一人に寄って
「助けはいるか?」
勇吾の心配そうな声に、それでも翔は能天気だった。
「や〜、かまへん、かまへん。こっちはもうちょっとで終わりそうやねん」
「そうか?」
「気をつけろよ。あいつら、結構、卑怯な手、平気で使って来るからな」
「お〜。それも、大丈夫」
和也の心配も、あっさりとスルーした。だが、その自信に根拠がないように思えて、三人は一気に心配になった。
「てゆーか、それ何なん?犬小屋でも作るん?」
翔は、これ以上その話題を引っ張りたくないのか、勇吾の手に持ったペンキを指差した。
「これは、文化祭の買い出しだ」
勇吾は、翔のボケを無視して、まともに返した。
「ほ〜。文化祭か。ええなぁ」
「お前んとこはしないのかよ」
「あるかどうかもしらん。聞いてへんしな」
転校生と言っていたから、そんなものか、と和也は納得した。
「俺らんとこは、外部オッケーだからさ、遊びに来いよ」
「え?マジ?行ってええの?」
和也の言葉に、翔が目を輝かせた。
「いい、いい。ま、俺らんところはイベントするから、サービスはできないけど」
「サービスなんてかまへんがな。イベントって、何すんの?」
何すんの?と問われて、三人は顔を見合わせた。
イベントは皆の中では「スプラ」で通じているが、いざ、それを説明しようと思ったら、どう言ったらいいのか……。
「『スプラ』ってゲーム知ってるか?」
「知らん」
う〜ん、と三人が考え込む。「水鉄砲を打ち合うイベント」が一番わかりやすいのだが、その説明だと非常に子供っぽい。それで結局、「来てからのお楽しみ」にしておいた。
「何や、えらい
という翔に、
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