第200話 理不尽で不条理な世界へようこそ

 昨今、面白くないニュースであふれている。


 地球温暖化、性差別問題、政治腐敗など等。


 昨日(2023.11.01現在)は郵便局に拳銃を持った老人が立てこもり、八時間後に取り押さえられた。


 ……菊地秀行の『狂戦士シリーズ』の新宿ではない。

 

 埼玉での事件である。



 私は、そんなシュールなニュースを毎日接していると感覚がマヒするというか、疲れてきた。


 スポーツジムのトレーナーが常々私に対して「隅田さんは感情などを真面目に考える癖がある。たまに、スルーしないと神経が参っちゃうぞ」と忠告していた。


 大きい声で威嚇して人を、それは政治家や芸能人関係なく、エッジの利いたような刺激的な言葉で「我らは正義なのだ」と思うドラマや政治家のなんと多い事か……


「てめぇのいいように世界は出来てない」


 世の中には理不尽なことが多い。


 その「理不尽」ということを頭の片隅に置いておけば、多少のことは我慢できる。


 ただ、我慢し過ぎれば壊れる。


 そのために私は読書という架空の時空旅行に行く。



「そりゃ、しょうがないだろう。そういう運命の人なんだから」


 時代劇小説の大家、池波正太郎は「運命」論者だったみたいだ。


 小説でも「運命なんだからしょうがない」みたいなセリフなどは多いし、エッセーでも晩年にかけて占いにハマる。


 ちなみに、六月生まれで蟹座のA型、ひつじ年の私は父親が実に学者みたいな人(サラリーマン)で「占いなんて当たっても八卦、外れてもホッケ(私が小学生時代の父最大のギャグ)」と言ってテレビが流す占いを否定していた。


 ついでの話だが、同じく時代劇小説の大家、柴田錬三郎との対談を読んだことがあるのだが後半がどことなく占いマシーンにいる女子高校生みたいな仲良し度具合で笑った。(あとで、怒られるな)


 では、祈りも努力も頑張りも全部無駄で人間は一生、神様だか偶然だかが決められた人生を歩むのだろうか?


「運命は決められているけど磨き粉にしちゃえばいい……君風に言うならゲームのレベルアップにしちゃえばいい」


 現実は魔物はいません。

 魔法も、武器も、鎧もない世界でどうやってレベルアップをすればいいんだろう?


「じゃあ、もっと分かりやすく、君が好きだった数学の先生でいうのなら『公式を覚えるだけが答えを見つける方法じゃない。ゲームの魔物だって戦士だけでも戦える。少し効率は悪いけど、同じゲームなんだよ』」



 現実に再び戻る。


 自分は何もできない人間だ。


 親がいなきゃ生まれなかったし、まあ、色々あるけど色々な人たちに色々な事されてきた。


 それで人が怖くなり自分の殻にこもった。


 それが取れて、ようやく、人になれたと思ったら、今度は封じていた思いが出ていた。


 スライムなんて生易しいものじゃない。


 大ボスクラスだ。


 どうやって、この『怒り』という感情と戦っていけばいいのだろう?

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