第198話 憎しみと愛の果ての物語

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が初動で三億円を叩き出した。


 他の邦画やアニメでもめったに出ない数字である。


 だが、その裏で地道だけど、その手のファンに若干の戸惑いの表情を浮かべた作品がある。


『北斗の拳』


 今年で連載四十周年なので各地でイベントなどが行われ、その中の目玉として『新装版』として発売されることになった。


 すでに愛蔵版、文庫本版、究極版など、よほどのマニアでない限り買いそろえるのは勇気がいる。


 さて、この作品は「神谷明氏が声を担当した」以外にほぼ共通点が無いように思う。



 まずは『北斗の拳』はほぼ連載終了後からパチンコでの大ヒットから猛烈な売り込みをしている。


 ミュージカルに書籍、新作映画やDVD、スピンオフ作品……


 その数はかなり多い印象がある。


 では、なぜ四十年前の作品がこんなにも愛されているか?


 それは、エヴァンゲリオンやまどマギのような謎解きがあるからだ。


 この作品はほぼ「行きあたりばったり」な作品である。


 粗を探せばいくらでも出る。


 しかし、その矛盾を逆手にとって「実は、こうではないだろうか?」という謎解きが出来る。


 また、当時のアニメとしては当たり前だが普通にオリジナルストーリーやオリジナルキャラクターによって矛盾などを補完した。


 同時に単なる敵だったアミバなど変に人気のあるキャラクターにも注目が集まりスピン作品もある。


 ただ、どうしても解決できないものがある。


 それは、連載終了後のケンシロウやバット、リンなどのその後が分からないことだ。


 そして、それは考察すらできない。


「死するならば荒野の中で」と言っているが、本当に荒野で死んだのだろうか?


 舞台は核兵器後の世界である。


 連載当時は千九百九十X年と表記されていたが既に今は二千年代で普通に生活している我々からすれば想像しがたい。



 次に『シティーハンター』はどうだろう?


 四年前にネットのニュースでいきなり『シティーハンター 新作で映画化』というニュースを見て驚いた。


 しかも、当時のオリジナルキャストでの復活、スタッフも当時の監督が続行、名曲であり代名詞である『GET WILD』がエンディング。


 しかも、現代が舞台だ。


 それまで、『今日からシティーハンター』などの番外編は数作あったし、実際『エンジェルハート』という続編もあったが私の中では非常に微妙であった。


 あるネットの書き込みで『普通のラーメンを注文して普通のラーメンが出てきた』と評した人がいた。


 確かにそうだ。


 作品単体としてみれば面白いのだろうけど、正直「なんか、『シティーハンター』の世界が壊れる」と思っていた。


 同時に原作に忠実に海原編をやるのは無理だと思った。


 理由は、長くシリアスが多めなので難しいと勝手に思っていた。


 かつ、キャストの年齢などを考えて「無理」と思い込んだ。


 ところが実際、映画館で観て驚いた。


 私の思い込みや心配は全部打ち砕かれた。


 画面にはリョウ(漢字が出ないんだよなぁ)香がいて、海坊主がいて、美樹さんがいて、冴子さんがいて「そうだよ、これなんだよ!」と思わせたのが『プライベートアイズ』


 それから四年後。


 ついに「最終章」と題して、『シティーハンター』の総決算として『海原神』の登場である。


 だが、ゲストキャラクターなどが違い、「おい、大丈夫か?」と思ったが、これも余計な心配だった。


 それ以上に凄かった。


『近況報告』で書いているが賛否があるが、テレビ版『シティーハンター』の最終回としての土台は出来たと思う。










 でもね、少しだけ心配なのはリョウは育ての親である海原に対して「憎しみ」だけで戦うのか、それとも「愛」を持って戦うか?


 ケンシロウは対ラオウ戦でこんなことを語っている。

「自分の中にはユリアへの想い、長兄ラオウへの想いがある。この一握りの想いだけはどんな剛拳でも砕けない」


 さて、リョウは何ていうんだろう?

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