第188話 「やりやがった」とみんな呟いた

 私の愛車点検は地元の中古車販売もする工場で見てもらっている。


 担当の営業の人がとても親切な上に同じガンプラ制作を趣味にしているので車検の見積もりもそこそこに営業の人のガンプラ作成の写真を見せてもらう。


 私はパチ組(ただ、組み立てるだけ)なのだが、向こうはしっかり改造までする。


「やすりはケチっちゃダメです……ニッパーは平刃がいいですよ……で、今回の車検ですが……」


 ここまで優に十分はかかっている。


 問題は、私の制作メインはポストデザスター(PD)とビルド組なので正統派宇宙世紀でユニコーンガンダムを話す営業さんの話は正直分からん。


 さて、本題。


 中古車市場で王位にいたビックモーターという会社の不祥事が明るみに出た。


 本当は三か月前ぐらいから週刊誌などでは特集が組まれていたが明るみに出たのはこの数週間だ。


 きっかけはCMに出演した俳優(正確には事務所が)が出演を辞めたことが発端である。


「あー、俺も被害に合っているよ」


 ジムで一休みしている私にトレーナーは普通に言った。


「数年前にバンパーが故障して保険屋に電話したら、ビックモーターを紹介されたんだ。


 で、紹介されて車を持って行ったらバンパーだけでいいのに『タイヤに穴が開いている』『オイル漏れがある』とか本来なら五万程度だったのが二十万円にまで膨れたんだ。


 ほら、老人がマッサージ屋さんで腰だけいいのに施術師の営業トークで全身してもらうのと似ているね。


 まあ、保険で賄えるんだけど妙に思って俺、本社に電話したの。


『おたくの見積もり、おかしくないか?』って強めに。


 そしたら、営業がアワアワになって『上と交渉します』で電話を切った」




 私の住む群馬県を始め、公共交通機関があまり発達していない地域において車を持ち、運転できることは常識であり、就職には必須である。


 当然、人の作ったものだから故障はする。(日本車の品質は世界トップレベルだけど)


 だから、車検やメンテナンスは欠かせない。


 万が一、致命的な故障の可能性や、故障していたら事故になりかねない。


 ある作家を乗せたタクシー運転手はこんなことを言っていたそうだ。


「車は便利です。でも、人を殺す道具にもなりえるんです」


 故に、整備工場と顧客とは信頼関係が非常に重要になっている。

(ただ、ノルマがあるのか転職などをする人も多く、営業さんが変わることが多いのだが)


 そこで起こった事件だ。


 確かに不正をしようと思えば、車のオーナーがいないから自由にできるしやれるかも知れない。


 でも、それを知った顧客やオーナーは二度と信頼をしようとは思うまい。


 












































































































 でも、思うのだ。


 本当は今回の様な大ごとではないにせよ、どこだって生き残るために多かれ少なかれやっているのかも知れない。


 そんな気持ちになる自分が少し嫌。

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