第163話 我慢のススメ
発達障害でよく言われるもので『我慢が出来ない(衝動性)』ということがある。
当事者として私も我慢のできない幼少期を送っていた。
まず、同じ症状で苦しむ当事者、親御様がいれば始めに言っておくが年齢を取れば我慢が出来る。
つまるところ、発達障害のほとんどは大人になると薄くなったり消えたりする。
それが十代か三十代かの違いであり、本人や周囲の理解や努力次第では早くもなるし遅くもなる。
ただし、放置をすれば無理解な周囲から責められてPTSD(心理的外傷)という二次障害になる。
適切な教育環境を整えることが大切。
で、本題。
私が子供の頃。
連絡は電話か手紙しかなかった。
書籍類はほぼ紙で出来ていた。
テレビゲームなどはなく、あっても外遊びもやっていた。
だから、とても普通に我慢が出来た。
逆に楽しみでさえあった。
子供たちは「相手のことも考えろ」と言われ続けた。
しかし、現在。
ネットやインターネット網の発達で我々は我慢しなくてもいい生活に慣れた。
文字通り、金さえあれば何でもできる。
スマートフォンなんて一人一台あってテレビだって書籍も読める。
小説家になるにしても、つい二十年ぐらい前まで原稿用紙にボールペンなり万年筆で文字を書いて、修正を何度も繰り返して応募先に送る。
今は、スマートフォン一台あれば満員電車だろうが仕事の中休みだろうが小説は書ける。
ただ、自分の思い付きをそのまま文章にしても読者が共感するとは限らない。
だから、書く前に資料を読み込んだり調べたりする。
これは原稿用紙時代から変わらないことだ。
でも、今はネットで古今東西の知識が一瞬で分かる時代だ。
かれこれ二十年近く駄文を書いていると、資料を読んでいると『使わない』ものもある。
たった一行のために医学書を読み漁ることもある。
ほぼ使わない知識を得たことになる。
それが逆に生きることがある。
使わない、無駄だと思っていたものが逆に武器になることがある。
我慢にも種類がある。
だから、苦しい道のりを超えた先人たちはいう。
――その道のりを楽しめ
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