第153話 まあ、結局、悪いのは犯人なんだけどね

 私は寿司が好きだ。

 友人とは時々カラオケボックスで飯を食う(最後の一曲だけは自分が歌うが・・・合唱部なのに音痴だし)


 これらの共通点は昨今、世間を賑わせている『炎上』の舞台になっていることだ。

(なお、私の回転寿司デビューは幼稚園児ぐらい。当時は高根の花だった。バブル全盛の時代である)


 少し思い出話をすれば、100円寿司が台頭してきたころ。

 アルバイトした金で「思う存分食ってやる!」と行った。


 それから、二十年(はい、人の年齢を計算しない!)。

 当時の私が今の状態を見たら驚くだろう。


 そもそもYouTubeなんてなかったしなぁ……


 今、もっともホットな話題である。


 もっとも、昨今のユーチューバーは人気タレントの流入や大手企業が自前でやるコラボ企画など今までの様な左うちわで濡れ手に粟状態から、本当に才能や逆にテレビに売り込む企画力が求められるようになった。


 対して彼らのファンでそれを理解しているのはあまりいないように思う。

 むしろ、「俺が一発当ててやる!」と乗り込む。


 実は似たような現象は文芸界でも時々起こる現象である。

 三十年以上小説を書いていると、時々『流行』として爆発的にアマチュア作家が増える。

 もちろん、わが師もそうだが、貪欲に知識を得つつ作法や規律を守り生涯の友と決めたものもいるだろう。

 

 だが、私に編集者もどきのようなことをさせた大半、というかほぼ全員、別の趣味や他の職業についている。

 私自身もまた、作家とは全く関係ない職業に就いた。

 

 今だからこそ書ける話であり、理解できることだろうが、始まりを書くより終わりを書く方が数段難しい。

 

 何故か、それは「風呂敷ストーリー」を広げれば広げるほど畳むことが困難になるのだ。


 私の場合、現在改定中の『WONDERFUL WONDER WORLD』は最初に終わりがあった。

 あとは、そのエンディングに向けキャラクターを作ったり資料集めをする。


 筆を折った彼らに、その労があったかと言えばほぼなかった。

 逆に師匠は徹底的に調べる。


 ここまで書いて何だが、別に今、これを読んでいる読者諸氏に『作家になれ』とも『作家になるな』とも言わない。


 ただ、私の人生経験からいうと理想は確かにプロの作家だけど、現実などを見据えると別に今の生活だって悪くない。


 何度も書いているが、子供の頃の私は作家になることに焦っていた。

 虐めにリストラ、親との不仲など重かった。


 誰にも理解されなかった。

 してほしくなかった。


 文字通り、世の中をすべて恨み、憎んだ。


 それはPTSD、心の傷になった。


 私は傷を隠しながら部屋の隅で蹲って泣いていた。

 傷から腐敗して死ねばいいとすら思った。


 そこに現れたのは二人の男性だ。


「どうした?」

 私は最初答えなかった。


「あ、この子。怪我しているぞ」

 怪我した腕を見て、別の男性が半ば強引に腕を上げさせた。


「痛い……」

 私は久方ぶりに声を出した。

 声がしゃがれていた。


「では、叫べ」


「?」


「声を上げなきゃ助けようにも助けられない」


 私は目を閉じた。

 数滴涙がこぼれた。


「痛いから助けて‼」


 目を開けると、二人の男性は消え、白衣を着た男性がいた。


「腕を見せて」


 怪我をした腕を恐る恐る見せた。


 彼は驚いた。

「うわ、これはひどい。腐敗しそうなものまであるじゃないか⁉ 緊急手術をします。麻酔をかけます!」


 意識が消えた。


 沢山の声や温もりを感じた。

 夢なのか、現なのかもわからない。


 再び目を開けた時。

 世界は一変していた。


 腕も自由に動くし痛みはない。

 ただ、大きな傷跡になった。


 再び歩き始めた私はかなり戸惑いつつ、少しずつ、恐る恐る生き始めている。



 うーん、何か小説みたいになってきたぞ。


 まあ、二十歳か高校生ぐらいの人間が楽して稼げるほど世の中は甘くない。

 

「世界を広く知る」ということがもてはやされ海外留学や小学生からのプログラミングなど自称・教育評論家(笑い)や文科省が推奨している。

 

『井の中の蛙、大海を知らず』という故事があるが、実は続きがある。(最近知った)

『されど、春には花弁が舞い、満月を仰ぎ見ることができる』


 世界は広くて奥深い。






 まあ、結局、あのジャリたちが一番悪いのだけど。

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