第148話 発達障碍者の世界
「あなたの頭の中ってどうなっているの?」
子供の頃、よく言われた言葉である。
中学生の時に国立病院で諸事情あって脳のレントゲンを撮って自分の頭蓋骨の内部を見させられたが、まあ、ほぼ普通の人体の本に出てくる頭蓋骨と脳みそを持っていた。
病院の先生曰く「(脳)味噌がぎっちり詰まっているねぇ。オジサン(=先生)なんてもう、スカスカだよ」
と笑っていた。
誰も「あなたは発達障害です」とは言わなかった。
また、知られていなかった。
それから、約二十年後。
私は『発達障碍者』になった。
世の中に『発達障害』と言うものが広まる前夜の話だ。
では、どのような障害か?
医学的に言うなら人間の理性や理論的なところを司る前頭葉に未発達、または機能しない部分があり相手や空気を読んだり、我慢することが苦手なのだ。
実際、私が勤めている(でいいのかな?)特例子会社にも何でも自分のことを話したい衝動に任せて他人に不快な思いをさせる人もいる。
本人に悪気はないのかもしれないがそんなの知るか!
私の場合は、加齢するとともに発達障害(ADHD)の症状は緩和された。
専門医を紹介してもらい、診察とリハビリ、投薬などでかなり楽にはなった。
ただ、PTSD(心理的外傷)は中々癒えず、未だ苦労している。
話が横道にそれそうなので本線に戻ろう。
では、私が体験したADHDの世界とはどんなものか説明したい。
ただし、これはあくまで一個人の目線で見たもので他の患者さんや重度の人はまた違った感じなのかも知れない。
まず、性能のいいマイクとヘッドフォンを用意する。
次に、そのマイクに向かい声優を十人ぐらい用意してもらい一気に全く別のことをアドリブで言ってもらう。
それを最大音量で聞いている感じなのだ。
「では、右から三番目の人は何を言っていましたか?」
と聞かれて答えられる人はいるだろうか?
それが寝ているとき以外ずっと続く。
または、外の風景を見ていると色々な思いが出る。
『あー、信号機の青って社会通念上のもので緑が正解なんだよなぁ』
『靴、そろそろ整備に出そうかな?』
『向こう側の人、マスクを外した』
『地球の重力が無かったら、歩けないんだな』
『本屋さんに寄りたいな』
『冷蔵庫の中に何があったっけ?』
『空が青いのは光の中の青に空気が反応しているから』
『あ、赤になった』
これを同時に考える。
ほぼ、思考のジェットコースターである。
発達障害自体は特別なものではない。
たまに重度の障害で絵画で評価される人もいるが、それは、元から持っていたものであり、それで自活できるのかと言えば疑問がわく。
逆に普通の生活を強いられ、かつての私のように限界寸前まで追い込まれている人もいる。
今の私のようにチャットで知り合いと夜中まで語り合う障碍者もいる。
別に社会のモデルケースではないし、ごみでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます