第141話 「大人の私」と「子供の私」
多重人格。
子供の頃の評だ。
確かに変な子供だった。
外で遊ぶのが嫌い。
幼稚園生で漢字は大体分かった。
物知りなのに分厚い魔法などの本を熱心に読む。
そりゃ、虐められる。
そんな中から「私」という自我が出来た。
子供の頃の私の主導権は当然、「子供の私」が握っていた。
我がままで癇癪もちでよく泣いた。
そこに別の自分が生まれた。
「大人の私」だ。
――我慢しなさい
――みんな、私のことが嫌いなんだから死ね
私は普通の人生経験や心理発達が出来なかったので普通の人がどうやって大人になったかは分からない。
でも、「子供の私」は成人してもなお、社会人になってもなお、居続けた。
周りが小学校の様な場所ではなく、会社という場所になっても変わらない。
人間関係なども変わるが、私は虐められていた時の風景に見えた。
――また、虐められる。
「それ、発達障害と
医師の言葉で、ようやく、封印されていた「大人の私」が目を覚ました。
一番恐れおののいたのは「子供の自分」だ
「殺される」
本気で思った。
だが、「大人の私」は「子供の私」との共生を望んだ。
決して楽な道のりではない。
確かに薬やリハビリでの認知行動療法など、それまで「わがまま」とか「泣き虫」と言われていたものにも理由がある事を知り軽くはなった。
でも、背負っているものは変わらない。
未だゴールには達していない。
何とか振り返るだけ余裕は出来た。
――歩いたなぁ
ため息が出た。
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