第4話

 昔、浅草演芸ホールで何回か寄席を観に行ったことがある。


 真面目な古典落語しかやりません、と宣伝すると客は誰も来ない。だから紙切り、奇術、漫才など色物で宣伝して客を増やす。だが最後まで鑑賞すると一番面白かったのは真打の古典落語だったことを、多くの客は納得して帰っていくのである。




 WWEのプロレスでは無料試合のギミックで宣伝し、ペーパーヴューで本物のプロレスを見せる。


 寄席にたとえればギミックが前座の色物で、古典落語の真打がペーパーヴューのメインイベントだ。


 同様に角川の考えでは、角川映画が前座の色物で、古典落語の真打が角川文庫の原作小説なのだろう。




 古典落語のよさがわかる人は寄席の通と言える。角川もマクマホンもその道の通と言っていい。


 二人は小説、プロレスとジャンルは異なれど、その真の醍醐味を知る男、つまり違いがわかる男なのである。

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