第32話 魔人との戦い

 私はついにツモアと対峙しました。ツモアの横には以前見た魔人がいます。キャッシュさんの襲撃時に彼を連れ戻しに来た女性の魔人です。私たちはにらみ合います。


 私はぎりぎりで間に合ったようです。しかし先制攻撃は防がれてしまいました。Cランクの火の魔石による自爆でも彼らは無傷でした。もっと高いランクの魔石もあるのですが、彼らの近くにある瘴石の粉が爆風で撒き散ってしまう危険があるので使えません。


 これから私はギミーさんが増援を送ってくるまで、一人で彼らを抑えないといけません。



「ナルネア、おそらく増援が来る。早く倒してしまおう」

「ええ、分かってるわ」


 魔人が攻撃してきました。私はそれを迎え撃ちながら、魔人のステータスを鑑定メガネで確かめました。


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 魔人 ナルネア 女 27歳

 レベル:17

 状態:普通


 HP:519/519

 MP:1468/1490

 筋力:340

 耐久:313

 俊敏:337

 知力:682


 スキル:『暴風魔法 LV4』『魔力感知 LV3』『魔力大上昇 LV2』

     『魔力制御 LV2』『身体強化 LV1』「水魔法 LV8」

     「気配感知 LV6」「土魔法 LV6」「回避 LV5」

     「思考力上昇 LV3」「料理 LV3」「注意 LV1」

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 彼女も他の魔人同様に魔法に特化したステータスとスキルです。距離をとって魔法で戦うのが得意なはず。私は距離を詰めるために突進しました。


 風の砲弾を撃たれましたが、風魔石のブレスレットが撃ち落としたり風のバリアを張って守ってくれました。続いて撃たれた土のつぶてを鉈が弾きます。水の槍が放たれましたが、これもブレスレットが相殺しました。


 私は距離を詰め、鉈をふるいました。ナルネアがとっさに回避します。


 相手の強みは魔力の高度な制御と魔法の多彩さによる手数の多さ、1体で多数を相手どれる範囲攻撃による制圧力です。並みの戦士では1対1では対処できません。


 しかし私であれば対処できます。私が戦いで優位に立てる点は、同時に複数のことができる点。スキルで命を与えた装備たちが各自で思考し動くため、マルチタスクができるのです。


 さらに私に有利な点があります。それは、ナルメアの圧倒的経験不足。つい先日まで闘病生活を送っていた彼女は戦いの経験が皆無だったのでしょう。魔力の多さとスキルの多さ、そして身体能力の高さによってカバーしていますが、無駄が多く隙だらけです。特に近接は鉈のスキル「剣術 LV8」によって身体能力値の差を覆し、私が圧倒しています。


 ツモアは離れたところで戦いを見ていました。彼のステータスを見たところ戦闘力は皆無。これも私が有利な点です。



「このっ!」


 ナルネアが飛んで空中に逃げました。私を見下ろして一方的に魔法を撃つつもりでしょう。しかし、彼女の背後を爆発が襲いました。戦闘中に空中に仕掛けておいた圧縮空気の機雷に当たったのです。これもマルチタスクによってできることです。


 ブレスレットについている魔石は12個、つまり風魔法を12重に発動できるのです。叩き落されたナルネアは風魔法の飽和攻撃を受けました。


 しかしナルネアも黙ってやられません。ブレスレットの攻撃は一つ一つは大した威力ではありません。立ち上がると力任せに水を放ちました。洪水のような勢いで水の壁が迫ってきました。


『私を下の階へ』


 私がスキル越しにそう言うと足元に穴が開き、私は下の階に回避しました。そのままその階を移動してから天井に空いた穴を通り、ナルネアの背後を取りました。


「な!?」


 ナルネアがこちらに気づいた時、私は既にスリングショットを放っていました。Aランクの火の魔石が直撃し自爆します。戦闘で瘴石から離れたために使うことができました。ナルネアが爆炎に焼かれます。しかしナルネアもすぐに水を生み出しダメージを軽減しました。


「どうやって後ろにまわったの!?」


 ナルネアは動揺していました。相手に弱みを見せるのも、戦闘経験の無さゆえでしょう。


「こうやってです」


 私がそう言うと同時にナルネアの両足元にそれぞれ穴が開き、足が落ちて嵌まりました。土の魔石の仕業です。ここに来る直前に下の階の天井に仕掛けておいたのです。


 ナルネアは土魔法で床を破壊すると穴を抜け出しました。生まれた瓦礫を一斉に飛ばしてきます。ブレスレットが風のバリアで防ぎました。そこにナルネアが突っ込んできました。彼女の風魔法で風のバリアが相殺されます。


「この距離なら!」


 ナルネアは至近距離で石の弾丸を放ちました。単発ではなく散弾です。鉈ではすべて防げません。


 私に迫った散弾は、ばら弾すべてが軌道を変えペンダントに命中しました。ペンダントによって止まった弾丸が地面に落ちます。


「は!? なんでよ!」

 ナルネアが驚きました。


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 被弾のペンダント


 アダマンタイト製のペンダント。

 スキル「被弾 LV3」を付与されており、一定以下の大きさの射出物を引き寄せ受け止めることで所持者を守る効果がある。

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 私が他より優位に立てる点がもう一つあります。それは、戦いが始まる前から準備しておけるということ。魔法は戦闘中に魔力を操って準備する必要がありますが、装備は持っていれば準備完了しており、即時使用できます。


 魔人との戦いに備え、私は様々な装備を用意していました。当然ですよね。


「くらえ!」


 ナルネアが薙ぐように蹴りを放ってきました。先ほど散弾を受けた反動でのけぞっていた私の胴体に蹴りが命中しました。私の体が今度はくの字に曲がります。


 しかし、私にダメージはそこまでありませんでした。服の裏に防具を仕込んでいたからです。


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 装甲紙


 スキル「装甲 LV7」により、鋼鉄製30㎜装甲板と同じ強度を持つ紙。

 ただし火や水、はさみに対しては普通の紙と同じ強度となる。

 また、攻撃以外で折ったり丸めたりする際にも同様に紙のようにふるまう。

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 蹴りが受け止められバランスを崩したナルネアを鉈が攻撃しました。ナルネアが傷を負いますが、浅かったです。ナルネアが風を纏いました。何をする気でしょうか。私は追撃しようと前に出ました。


 鉈の斬撃がナルネアに迫りました。鉈が完全にナルネアを捉えたと思った次の瞬間、鉈はナルネアを素通りしました。


「へ!?」


 今度は私が驚く番でした。

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