第40話 いざ、宝島へ

 私と女勇者はティーチのつてで船を用意してもらい、宝島への出発準備を整えていた


「本当にこれで行くの?」


「そうだが、何か問題が?」


 どうやら女勇者は手に入れた船にご不満の様だ。お世辞にもいい船とは言えないが十分だろう


「ただの手漕ぎボートじゃない・・・」


「安心しろ貴様に腕力など期待していない、私が漕ぐ」


「余計心配なんだけど」


「なら穂を張って風でのんびり進むか? 私が漕いだ方が確実に早いだろうに。オールの強度が気になる所だがな」


「大丈夫じゃないじゃない! アンタなら風ぐらい操れるでしょう!」


「確かに容易い、だが風の流れと一緒に帆を張っている船団が一斉にこちらを向く事になるが・・・、それでもいいのかな」


「はは、周りの空気が一斉に集まってくるような突風が来たら、私が死ぬわね・・・」


「その通りだ、諦めろ」


「うう・・・、本当に死ぬはめにあいそう」


 まったく…、うなだれる女勇者をなだめてやる事にしよう


「心配するな。万一船が沈むような事態になろうとも奥の手がある」


「空でも飛ぶの? まさか泳げって言うんじゃ…」


「いや、海を割り底を徒歩で行く。それならお前でも大丈夫だろう」


「それ、割れた海の断面から生き物が飛び出してきたりしない?」


 少々疑心暗鬼になり過ぎている様だな。やれやれ


「ちゃんと障害物が飛び出さんよう結界を張る。最近人間が作った水族館なる娯楽施設があるだろう、アレと一緒だと思えばいい。・・・海賊の海に作るわけだから水賊館か」


「それ、見世物になるのはむしろ海を割って地面を進む私たちの方じゃない?」


「フフ…、そうかもな。見世物になるのはごめんだ、しっかり守ってくれよ」


「はいはい、仰せのままに魔王様」


 こうして私達は船をこいで、海賊と魔族が争う海域に出発した


「ドンドンドン!」

   「ギシャァアアアアン!」


 大砲が飛び交い、水竜はうねり、海面はさらに激しく波打つ。その中を私は高速でオールを回しながら突破を試みた


「なんだあのスピードは!? 新手の魔物か!?」

「なんだあの船!人間共の新型か!?」


 私達を目撃した海賊や魔族達は互いに相手の新兵器とでも思ってしまったようだ。これだけ大型船と、大型種が入り混じっている戦場なら小型船は目立たんと踏んでいたが失敗だったな


                        「ドン!」

                  「ドン!」 

             「ドン!」

「バシャバシャシャシャシャシャ!」

              「バチン」

                  「ドゴン」

                        「ブオン!」


 海賊共はこちらに向かって撃ってくるわ、魔族もこちらに尾を振り牙をむき襲ってくるしまつ。だが、私のスピードにはついて来れる者はいなかった。これならば問題なく目的地につけそうだ。・・・・それまで船にしがみつている女勇者がもてばの話だか


「きゃあああああああ! 死ぬ死ぬ! 絶対死ぬ! バルト止めてッ!!」


「今止まったら蜂巣だぞ。お?」


「どうしたの?」


「摩擦でオールが焼けてしまったようだ。少々さますから時間を稼いでくれ」


「はいぃ!?」


 オールを漕ぐのを止めても余力で船は進んではいるのだが、それでも追いつかれてしまうだろう


「キシャア!」


 案の定、目の前に大きく口を開けたサメの魔物が現れた


「ちぃ!」

   「タン!」


 女勇者は銃をそのサメの鼻の辺りに向け発砲し動きを止め、その隙に腰のカトラスを抜いて縦に真っ二つに切り裂いた


   「ピラン・・・」

「ザシュン」

   「ピラン・・・」


 そのサメの間を、サメの切り身にオールの擦れる部分を突っ込んで冷しつつ、血を潤滑剤にし無事に通り抜けたのだが、今度は背後から砲弾が飛んでくる


     「ドン!」

   「ドン!」

       「ドン!」


 私は砲弾を避けつつウネウネト軌道を変えながら前進する


「ようかったな女勇者よ。脅威を排除すると同時に潤滑剤も用意するとは」


「狙ってやったんじゃないわよ! それに血が焦げて魚臭い!」


「もう焦げだしたか。これだから人間製は・・・」


  「ガララララララ!」


 目の前に海賊船が倒れてくる。ちょうどいい発射台だ


「このままあの船に突っ込むぞ!」


「待ちな! 船の上に人が!」


「助けている余裕などないぞ」


「ちょっと手を貸してやるだけさ!」


 女勇者は私より先に船に飛び移り、斜めになってる船の上を駆けながら銃を取り出し、船に攻め入り船員を襲っている魔物達を撃ち抜いて行った


「1つ!」  「2つ!」 「タン!」

  「タン」   「3、4!5、6!みぃ、よぉ!いつむー!!」

       「タン!」「タン!」「タタンッ!」


 通り道に居る魔物を蹴散らし道を確保する女勇者。さすがだな、だがまだ埃が残っているぞ


「なんだ!? 援軍か!?」


「邪魔だ」

    「なに? ぐべ!」


 船の勢いに任せ滑り上がる進路上に残った人間の1人をオールで殴り倒して退かしたてやった


「ちょっと!なにしてんのさ!!」


「障害物を退かしてやっただけだ、殺してはいない。行くぞ」


 私は女勇者を飛ぶ寸前で回収し手漕ぎ船に引き上げそのまま飛んだ


「ヒュン!」


「このまま島に着地する!しっかり掴まるがいい、フランチェスカ」


「やっぱり、結局は飛ぶんじゃなぁぁあああい!!!」


 「ドッ」 

    「ドッッ」

        「ズルルルルゥ・・・・」


 無事に島までたどり着けた私達は、着地の衝撃で半壊した船を下りてひと息つく


「無事にたどり着いたな」


「無事って言うほどのものじゃないと思うけど? 船壊れちゃったじゃない」


「それがどうした。さっさと貴様の宝の隠し場所までいくぞ」


「わかったから! あんまり散らかすんじゃないよバルト」


 私と女勇者の会話に割り込む様に、物陰から魔族の者が高笑いを上げて物陰から現れた


「ふははははは! キサマ!宝の隠し場所を知っているのか!」


「誰だい?」


 また面倒そうなのが出てきたか・・・。流石に二度目は早く終わらせるか

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