第28話 魔王のパーティ準備

 面白そうな話を勇者から聞いたので、さっそく準備を始めようとしたところ


「フフフ、ではパーティの準備をしなくては、遅れてはまずい。それではさらばだ勇者諸君! 会場で会おう!」


「待ってください我が死! 僕もお供いたしますよ!」


 転移魔法を使おうとしたら勇聖者に掴まて止められた、なんの用だと言うのだ全く。勇者も殺した相手が戻って来て動揺している


「うっわあ! また出た!? え、ええ!?」


「いやぁ、近くに教会があって良かった。少々走る羽目になりましたけどね、ふうぅ」


 帰って来た勇聖者に混乱した勇者は放っておいて、ひと息つきながら前の身体を蹴飛ばす勇聖者の話でも聞いてやるか、大体想像はつくが


「貴様は人類側だろう、ついて来てどうする」


「両陣営の殺人技を身を持って受ける、またとない機会です」


 やはりか…、しかしこのマゾっぷり、まさか私が拷問したせいで目覚めたわけではあるまいな? 少々頭が痛い


「やはりな・・・。しかし魔族だけでなく人類側も大量に殺す事になる、もう勇者には戻れんぞ」


「それがなにか? 自分の生どころか勇者地位にも興味ありません。というよりその勇者の名誉が危ういからこそ、今回の様な騒ぎが起きのでは? いりませんよそんなの」


 勇聖者の言うとおり、戦争が終わった後に用済みにされこいつ等の様に馴染めないものは多い、勇王の魔界に攻め入る計画も口減らしを兼ねている事は容易に想像できる


「それは確かにそうだろうが…」


 お前が1人来ると玩具が1つ減る事になるであろうがと思っていると、勇者もしゃしゃり出て来てきた


「俺も行くぜ」


「お前もか・・・」


「今の世の中、血に飢えた戦争を知らない世代は魔族と大して扱い変わらないしな。それに魔族も大量に殺れるなら都合が良い、門が開けば結果がどうあれ魔族側の報復があるだろ、被害を抑える意味でも両陣営の好戦的な奴等はさっさとブッ殺した方が良い、それが人類の為ってもんよ」


「ずいぶん思い切ったな貴様」


「バルトの言う通り戦った後には勇者としての名誉は残らないかもしれないが、世間様の為に出来る勇者としての俺の最後の戦いになるだろうな・・・」


 麦わら帽子姿に鎌かついで言うな農奴。何でコイツはバカのくせに妙な所で真面目なのだ! いや元々真面目だが頭がついていけていないのか?


「私も行くよ」


 女勇者よ、貴様もか


「また戦争状態に戻っても海賊にはもう戻れないだろうからね、ウジウジやってるよか今まで貯めたもんをパァーっと使っちまおうじゃないか。この三人なら私の攻撃に巻き込んでも大丈夫だしね、遠慮なくやれそうだ」


 勇者は女勇者の言葉に反応した。もちろん農家の格好のままで


「俺も巻き込む前提かよフラン。言っとくがな、俺だってフル装備で戦えれば例えお前が艦隊引き連れてたって負けねえぞ」


「それはこっちのセリフでもあるよ。準備さえ整えばバルト相手だってもう少しは持ちこたえられたさ」


 二人の会話を聞いて勇聖者がため息をつく


「僕は教会内と言う好条件で我が死に挑み敗れたのですが・・・。元気ですねぇ」


 もうコイツ等どうにでもなれ、別の遊び方を試すとしよう


「わかった…、勝手にするがいい。しかしその装備や準備やらがあっても貴様らと言えど身がもつまい。我が友に協力を頼むとしよう」


「バルトに友?」


「私に友人がいては不満かエルウッド?」


 勇者は渋い顔をしたままこう言った


「いや、そう言う訳じゃないが、魔族に協力を頼むのは流石に抵抗があってな」


「安心しろ、ヤツは人間だ」


「人間!?」


「直ぐに飛ぶぞ、来るのか来ないのか」


「い、行くよ、行きますよ!」


 私は転移魔法を使い我が友の工房まで勇者共と共に飛んだ


「グオオオオオオォォォォン」


       ・

       ・

       ・


「着いたぞ。ここは相変わらずだな」


 突いた途端、周りの惨状から勇者共がため息を漏らした


「ここが我が死の友が住まう場所…」


「どこに進めばいいんだい、なんか辺り一面物が散らばってて道らしきものが無いよ」


「これで相変わらずなのか…、慣れてるなら案内してくれないかバルド」


 そう言われてもな


「いや、相変わらず毎回違う物が散らかっているから私でも道が分ぬのだ。魔力場も乱れていて気配も辿れん」


「はあ・・・、ガラクタ退かしながら進むしかないか」


「決して手を触れるな! もしこの奇怪な物体共が誤作動したらどうする!」


「じゃあどう攻略すんだよ!このダンジョン!! 魔王が迷うって相当だろ、ラスボスすら迷うダンジョンってあり方として間違ってるだろが!!」


 勇者はすでにここを人間の住処として認識していない様だ


「うるっさいなぁ! なにぃ、お客さん…? あ、シュルバトだぁ、久し振りじゃん♪」


「変わりないようだなラギ」


 騒ぎを聞きつけ、この住処の主マミコ・キサラギが姿を現した


「シュエルも変わらないね♪ さ、立ち話も何だし中に入ってよ」


「ああ。お前達、はぐれるなよ」


 そう言ってラギの後をついて行ったのだが、後ろの方で・・・


「あ、待ってくれよバルト! ・・・これ邪魔だな」


「バチバチバチ!」


「あばばばばふがば!?」


 ・・・勇者が電撃に苦しむ気配がした。触るなと言ったのに


「何やってんだい、たく!」


「カチッ」


 女勇者が倒れた勇者を抱き上げた途端、不吉な気配がした


「走ろう」


「そうだな」


 ラギの言葉に同意し私達は急いで先を進んだ


「ドオオオオオオオン」


 不吉な予感どうり、背後で激しい爆発が起きた様だ。勇者共の叫び声も聞こえる


「うわわわわ!?」

「きゃあああ!?」

「あははははは!」


「ガラッ・・・」


 その影響か、私たちの周りのガラクタにも不吉な気配がする


「雪崩か・・・」


「あちゃ~、本当に急がないとね」


 危機を回避しようと先を急ぐ我々・・・・


「待ってくれぇ!!」


 「おいてくんじゃないよ!」


「我が死よ!これしきの事では僕は止まりませんよ!!」


 ・・・・そして走る私達を無作為に勇者共が追って来たせいで事体はさらに悪くなった


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