第29話 持つ者、持たざる者

 私達は我が友マミコ・キサラギの案内で、工房の奥の生活空間に行くまでの道中、爆発5、雪崩2、電撃1回などのトラブルはあったが無事にたどり着いた


「いらっしゃ~い、いや~シュエルが他の人を連れてくるなんて珍しいね、なんの用なの?」


「近々パーティがあるのでな、そこで這いつくばっているゴミ共を少しはマシに出来るモノを見繕ってほしい」


「あ、勇者王の戦に割り込む気でしょう。OKわかったわ」


 私達が雑談している間、後ろでへばっている勇者共が愚痴をこぼしていた


「何であの二人は無傷なんだ…」


「慣れているとかじゃないかい?」


「あの様な女性が居たとは…、もし戦時中に表舞台に立っていたら、人類側に大きな利益をもたらした事でしょう。我が死はあのような人材を匿ってたとは」


 最後のバルディの言葉が引っ掛かったがそれは無い、彼女の感性は人に理解される様な類のものではないからな。などと思っていたら彼女の感性に引っかかるものを見つけた様で、フランチェスカに話し掛けていた


「お姉さん、おねぇさん、ひとつ女物の装備があるんだけど、試してみないかい?」


「え、なんだい」


「じゃーん♪ ビキニアーマーです♬」


「アーマー? 鎧なのかいこれで? 露出が多すぎて急所を守れないじゃないか」


「ノン、ノン…、舐めてもらちゃ~困る。これは何故人魚は女性ばかりが発見されるかとういう疑問から生まれた特殊アーマーなのです!」


「人魚が女性ばかりって、それは・・・」


「あぁ、真面目におっしゃらないで。事実がどうであれそこからどう発想を得たかが重要なんですって」


「は、はぁ? ま、まあバルトが頼るほどの人だし・・・つづけて」


 女勇者は戸惑いながらもラギの話を聞く事にしたようだ


「なぜ人魚は女ばかり発見されるのか…、それは彼女達の!胸が!魚の胸鰭の様に動き水を掻く事によって男性よりも高い水泳能力で海面によく上がってくるからではないかとの考えから生まれた超軽量アーマーなのです!」


「うわ、想像しちまったけど気色悪ぅ! じゃあ自分の意思で動かせるってのかいあの胸は!」


「そうそう、実際どうなのか知りませんけど。で、従来の鎧は面積を増やすと可動域が狭まり、防御力を上げようと鋼材を厚くすると重量が上がる等の問題を一挙に解決する妙案にたどり着きました!」


「え?」


「つまり!装甲を豊満な胸の先端だけに集中させる事により軽量化と柔軟性を合わせ持った奇跡のアーマーが出来上がったのです! これはもう胸当てと言うよりも、胸についた小さな盾!」


「私の胸は自由に動かせないよ!」


「ご安心を! 攻撃を受け流す様に自動追尾し、勝手に防いでくれるのです! 防御力はピカイチですよ!」


「自動追尾!?」


「はい♪ もちろん胸の大きなによって防御力が左右されますが、貴女なら大丈夫! これで鉄壁の胸囲を手に入れられますよ」


 いつぞか私が胸で砲弾を跳ね返したのもこのビキニアーマーの動きを真似たものなのだが、女勇者はご不満の様だ


「誰が使うかそんな変態装備! 何なら自分で試してみな!」


「私の胸囲を見て言ってんですかぁ? 私に使いこなせるわけないでしょう言わせんな!!」


 そう、未知のモノに対して空想で補い、そして時にはその空想を成し遂げてしまう人間の業! 愚と賢が見事に調和した彼女の頭脳はまさに人を代表する宝! 流石は我が友! しかし何故か人類には評価されない、私の四肢斬り鋏も彼女の作品なのだが…


「何故、評価されないのだろうか…、ラギよ」


 対して私は何故魔王として評価されたのだろう…。絶対的な暴力とみなされた事もあるが、思いもよらない所を評価している者も居た。私は隠居後、たまたま巡り合った魔族幹部との会話をふと思い出してしまった


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「魔王様、まさかこのような場所でお会い出来るとは。わたくしめを殺しに来たのでしょうか?」


「たまたま目に入っただけだ。それともう私を魔王と呼ぶ必要は無い、もう何者でも無いのだからな」


「ご冗談を、貴方様ほど魔王に相応しい方もおりますまい」


「その魔族の長たる魔王が、導くべき魔族達を殺戮したとしてもか?」


「はい、おっしゃる通りです。あの戦争は我々が優位に立ち過ぎましたから。ああでもしないと歯止めが効かなかった事でしょう。計算の上でやられた事では?」


「さてな…」


「おとぼけになられて、この魔人エルゲムを試されているのですか? 魔族は力を持つがゆえに、遺憾ですが技術の発展が乏しく人類からの略奪品により発展してきたのが実情です。程よい脅威を与える分なら人類側の技術が発展し結果有益になりますが、その人類を壊滅させては魔族は長い停滞の時代を迎えていた事でしょう。食物連鎖において我々魔族の下に居る人類は我々より多い位が丁度いいのです」


「ふん・・・・・」


 確かのその懸念は余の頭には有った、だが私が弱者を大量に間引いたのは余が退屈したくなかっただけの事、結果そうなっただけで魔族社会の為にやった事ではない


「貴方様はその手を自らお汚しになられた、まさに圧倒的暴力による救済!これ以上魔王に相応しい方がおりません! それに比べて現魔王ときたら・・・」


「興味ないな・・・」


「そうですか、では別の話題でぜひお耳に入れたい事がありましてよろしければそちらを」

 

「ほうなんだ」


「実はわたくし陰ながら人類の新たな技術発展に協力してまして、ただいま異界の門を開ける装置を開発しているですよ。それとまだ構想の段階ですが、更にその技術を発展させ、強い魂を異世界から呼び出し仮の器に入れる人造勇者計画を・・・・」



                ・

                ・

                ・


 あやつめ、まだ出来るか分からぬ事を嬉しそうに話していたな。それに比べて私は・・・


「私は一体・・・、何なのであろうな」

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