第14話 三毛猫
小学校からの帰り道だった。
上空には雨雲が広がり、アスファルトと同じ色に見えた。
能登の隣には、自分と同じようにランドセルを背負い、傘をさした望月の姿がある。望月の横顔は幼さが残っているものの、それとは対照的なほどに辛そうだ。その視線の先を能登も見つめる。
そこは開いているのを見たことのないタバコ屋の前で、郵便ポストの隣。
元の飼い主にも心があったのか、その段ボールは雨がかからないように店先のトタン屋根の下に寄せてあり、ボロの毛布に包まれていた。
でも、そんなのが愛情になるわけがなかった。
そんな優しさには、すべてが足りなかった。
生気のない顔がそこにはあった。生きているとかろうじて分かるのは、その儚げな呼吸があるからだ。そこだけ時が遅くなってしまったかのように、ゆっくりとしたペースでその胸は上下運動を続ける。
このまま雨脚が早まったら、段ボールは容赦なくずぶ濡れになるだろう。
こんな小さな三毛猫が、この寒さに太刀打ちできるはずがない。
「私、この子を飼いたい」
「家族に相談しなくて大丈夫なの?」
能登は不安そうに顔を上げ、隣の望月に伝える。
望月はそれでも、その段ボールを抱え上げた。
「このままにしておけないよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます