第15話 高嶺の花

 目が覚めた。


 酒を飲みすぎたからかも知れない。久しぶりに夢を見たなぁと、能登は寝ぼけ眼で思う。


 あれは小学三年生だった頃の記憶だ。


 学校帰りに三毛猫を拾ったけれど、結局、二人とも猫を飼うことはできなかった。結果的に望月の従妹に引き取ってもらうことで解決したけれど、望月が悔しそうにしていたのをよく覚えている。望月はあの時「大人になったら三毛猫を飼う」と言っていたが、それは実現したのだろうか。


 テレビを点けて、チャンネルを回す。


 月曜日が晴れることを知った。


 そして能登は、天気予報を探している自分の姿に気付いて、新しい事実にも気付いた。


 自分は、手を振る彼女のことを楽しみにしている。


 だから、そう考えている自分を馬鹿だと思った。その理由は、彼女と面と向かって話をしたことがなくとも、彼女を食事に誘うことはできるはずだからだ。どうせ彼女が高嶺の花ならば、言い寄って玉砕すればいい。このまま高嶺の花を見つめていることが正しいとは思えない。玉砕できる勇気がないのであれば、彼女を見ないようにすること。それが答えだと思った。


 しかし、能登は自分で決めたことを、そのまま実行できる強い意志など持ってはいない。能登は思い出す。小学生の頃、お婆ちゃんに駄々をこねて貰った切手集めだって、3日も集めずに辞めた。続けることができたものなんて、今まで何もない。


 今からでも、何かを始められるだろうか。


 だが、何を。

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