第4話

「そう言えばあそこなんかあったよな。」


不意に気になって、ひたすら歩き疲れて一服も兼ねようと思って図書館へ。

地元紙の記録を探してひたすらめくる。

「あった。」

【女が押し入り店員めった刺し】

この件はひょっとしたら俺が拾ったピロートークの1つだったかもしれないと気色のいい話じゃなかったから覚えていたんだ。

商売女が嫁のいる男に入れ込み、逆に金を貢いで捨てられ、嫁を惨殺。

その後呪詛めいた言葉を撒き散らしながら半狂乱、最後は自分の頚をズボッと砂堀りでもするかのように抉って自殺。


やっぱり。


なんか段々嫌な予感してたのよ。

カッコつけて出て来て遠路歩いてきた以上、後には引けないじゃん?


どんぴしゃ。


ぴしゃぴしゃもいいところ。

下手にこういう点と点を手繰り寄せる、変な才能かなんかあるせいだよ、全く。

これがなきゃ、とっくに足洗って金づるゆすってヒモ暮らしでのんびりしてるのによ。


これから向かう場所は、ラブホテルがちらほらある山あい、そこのふもとにあったコンビニ。ピンクな需要と供給で成り立ってたんだろうな。

周りもやってるのかないのかわからんような昔の個人店、ピザ屋、ぽつりぽつりの一軒家。遠くにスーパーと個人の病院て所か。ひっそり細々といった感じだわどこもかしこも。


山てこととこの近辺の雰囲気やらで、なんか曰く付き感がひしひし伝わってくる。

それで事件があって潰れたコンビニに変な気配ときたら、


探偵の仕事じゃなくね?

なくなくなくね?

この手のドロドロはたまにあるね。でもひゅードロドロドロは苦手なんだが。


仕方ない、せっかく来たんだ。

覗くだけでも拝ませてもらおうか。


......


近づく。ガラス張りの部分から中をみやる。よくある放置物件だ。

一応中に、売り物件やら賃貸OKやらの看板が転げてるが、

誰がこんな所買うかよ。

持ち主か不動産屋は鬼ですか、鬼畜ですか。まあいいけど。これも、どこかで飯のタネになるかもしれない。

それはそれで、もし人がいるなら何かしら形跡ってもんがどこかにあるはず。そもそもこんな気色悪い所でわざわざ何をやってるんだてことなんだが。


こちらも不審極まりないだろうから夜にしたわけだが、近隣の灯りがない。

山と町並みの間に急にぼかんと嵌め込んだようなアンバランスさ。より埋没して暗闇を感じさせる、変な遠近感。


持ってて良かった、蛍光灯!


カチッとな。

はぁあ~と安堵のため息が出る。

灯りてとても大事なのね。

よし、少し呑まれそうな不安は拭いきれた。

再度中を伺う。

コンビニは、駐車場が広いところもあるが、中は言うほど広くはない。

棚や物がないから拓けて見通しが効く分尚更だ。

それなのに、だ。

なぜか、大型モールの一階分位に感じさせる。

変な汗が顔を流れる、それに驚いて、ばっと顔を拭う。

なんだ汗か、そう思う足元に


水溜まり!?


嘘だろ?これは俺の汗か?

そんな馬鹿な話が。


周りを見ても照らした先に水が流れてきたような跡もなく、やはりこれは自分から流れたものらしい。

こんな尋常ない汗をかくほど、何かがここにはあるのか?

余計な情報を入れすぎてビビってしまったか。ハッタリと口のペテンでやってきた俺が?


やっぱり帰ろう。とりあえず日中に来よう。うん。

探偵に勝ち負けはない。

うまい飯が食えるかどうかだ。

後は大家にどやされるかそうでないか。

そんなもんでいい。突いて手に負えないモノがでて来たら探偵なんていちころだ。


今日の所は帰るとしよう。



彼が踵を返して、町の極力明るいところを無意識に歩いて帰って行く。


コンビニの中は暗闇だが、その中で色違いの闇がゆらりと動いたような。


ぎしり,,,


ぎしり,,,

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