七 河童淵のサルの巻
その淵は
そんなところへ元気な子どもの叫び声が、空から降ってきたのです。カッパは
――なんか、美味しいもの、食べてたでしょ? なに食べてたの?
そう訊きたかっただけなのに。
カッパは、ぺちゃんこの鼻を、ヒクヒクさせて
このままでは怒ったオオカミの
「おいら、カッパじゃないよ!」
追いつめられたカッパは、
「サルだよ! うっきっき!」
「ええっ!」 「ほんとうに?」
太郎とオオカミは目を
「ほんとうだよ! うっきっき」
カッパは急いでしゃがみ、左の手で頭を、右の手でお尻をぽりぽりと掻きました。
「よく誤解されるけど。おいらは、おサルだよう。うっきっき。生き
「その皿はなんだよ?」
オオカミが、自称サルの頭にのっているお皿を、疑わしそう睨みました。
「これ? これは、ほら、遠泳用のキャップだよう! おいら、泳ぎが大好きなんだよう。うっきっき」
自称サルは、内心ドキドキしながら、歯をみせて笑いました。
――そんなことより、なに食べてたんだよう。おいらにもくれよう!
カッパは心の中で叫びました。
「なんだあ。サルだったのか」
あははと太郎が笑いだしました。
「ごめんね。サルさん。僕、カッパって見たことないから間違えちゃった。ねえ、すっかり間違えちゃったね、イヌさん?」
「ええっ? イヌ? だれがイヌ?」
息を引いてオオカミを見つめる自称サルを、オオカミは鋭い牙を
「わんわん! イヌです! よろしく!」
自称イヌが低い声で唸りながら、自称サルに
「あ、はい! こちらこそ! サルです! よろしく! うっきっき!」
二人は深くうなずき合いました。
「サルさんも、きびだんごをどうぞ!」
太郎が、きびだんごの包みを差し出しました。
「うひゃあ!」
カッパの赤い目は、その竹の皮の包みに釘付けになりました。
包みからは
「まさか、おいらに、くれるのかい?」
「うん! 助けてくれたお礼!」
太郎が包みをひらくと、たっぷりと
震える指で、ひとつ摘んで口にいれたカッパは、あまりの美味しさに気が遠くなりました。
「おいしい! こんなにおいしいもの、はじめて食べた!」
「そうだろ。おいしいんだ」
オオカミが深くうなずきました。
「おばあちゃんが、いっぱい
太郎が笑いました。
「ありがとう! 太郎さん!」
こうして三人は友だちになりました。
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