五 イヌの道案内の巻
オオカミは
そこは「
太郎の腰より高くつもった黄色い枯葉に混ざって、茶色い丸い実がたくさん落ちています。顔を上げると、
「こんなとこ、はじめて来た!」
太郎は目をまるくして、古木の森を見渡しました。
「たぶん大昔から、この谷に人が入ったことはないよ」
小さい太郎のために、
ふいに心細くなった太郎は、
水の匂いがしました。オオカミは崖の端に坐って、下を見おろしています。太郎も並んで崖下を見おろすと、とろりと
その谷の切り立った岩肌は、白くて磨いたように滑らかです。
「太郎さん。ここは
赤松色のふかふかした毛並みを太郎に向けて、オオカミが言いました。
「ええっ? イヌさん。ここを降りるの?」
太郎はもう一度、崖下を見おろしました。
「さっきの
「心配するな。クネンボみかんを取りにいくんだろ?」
オオカミが牙を
「うん!」
よいしょと太郎が
「いくぞ、太郎さん! しっかりつかまれ!」
「はあい!」
オオカミの足が力強く地を蹴りました。
「うわああああああ!」
太郎の桃のような頬に、思いきり風が吹きつけます。
跳躍したオオカミは、太郎を背中にしがみつかせたまま、前足と後足とシッポを大きく広げて、ひらりと宙に舞いました。まるでムササビのようです。
――うああああ…… うあああ…… うああ……
太郎の叫び声が、こだましました。
「落っこちゃう!」
太郎が、風になびく
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