作戦会議


 こうして短時間に、二人の仲間を見つけられた俺は、早速モンスター狩りのために森へと来ていた。

 武器や防具などの装備は、エレナの屋敷に用意があり、それを貰ったのでこれに関しては運が良かった。

 エレナを仲間に出来て初めて、そう思ったのだが、そんな俺の耳元で。


「後で、ちゃんと返してもらうからね。体で」


 と囁かれたから、すぐに前言撤回した。

 顔に出しているつもりは無いから、思っているのをバレるのは面倒だし怖い。

 そう思っていることでさえも見透かされそうだから、心を無にした方が楽だと俺は気持ちを切り替えた。

 一度仲間にしたのだから、悪い感情はあまり抱きたくない。

 俺は根っからの平和主義者なので、争いごとは好まない。

 ……生死がかかっていたら、別だけど。


 そういうわけで、俺がこの世界で生き残るために、今回犠牲になってもらうモンスターですが。


「まさかの、初っ端からこれ?」


 聞いた途端、弱音を吐いてしまった。

 だって、まさか。


「そうよお。前々から、この街に迷惑をかけていたからちょうどいいのよ」


「それでもドラゴンって!」


 いくら何でも、無謀すぎる。

 こういう時はRPGのゲームのように、まずは弱い敵を倒していってレベルを上げて慣れていくんじゃないのか。

 いきなり中ボス級は、荷が重い。

 俺は胃がキリキリと痛むのを感じながら、エレナの話を聞いた。


「このドラゴンのタイプは土だから、他と比べたら弱い方よ。街外れの洞窟をねぐらとしていて、空腹になったら街に降りてきて荒らしていくの。だから困っていてね」


「でも、どうやって倒すつもりだ?」


 今現在、俺達はその洞窟の見えるところまで来ている。ここでドラゴンを倒すための、作戦会議をしているのだ。

 自分で言うのをなんだけど、このスキルを持ったメンバーでドラゴンが倒せるとは思えない。

 これは正攻法で、というわけにいかないな。

 エレナには、いい作戦があるんだろうか。

 そう期待して聞いたんだけど、返ってきたのは。


「無いわよ。そういう頭を使うのは、私向いていないのよね。後方支援担当だから」


 言葉の後ろにハートマークがついていそうな、清々しい答えだった。

 俺は顔を引きつらせながら、今度はサーシャを見た。

 一緒に話を聞いていた彼女は、俺の視線に気がつくと首をかしげて微笑んだ。

 その顔は、明らかに話を聞いていない表情をしていた。

 これは、俺がなんとかしなきゃいけないのか。


 突如のしかかってきた大役に、押しつぶされそうになるが、必死に頭を働かせた。

 この状況、洞窟の中のドラゴン、俺を含めたみんなのスキル。

 前の世界でのテスト以上に、脳みそを使っている。

 そうして、悩みに悩んで立てた作戦。

 俺はそれを二人に、ひそひそ話で伝える。


「は、はい。私、頑張ります!」


「オッケー。その作戦が上手く行かなくてもいいわ。サーシャと私が、生き残れるならね」


 反応はそれぞれ違ったけど、協力はしてくれるみたいでよかった。

 上手くいく確率は低いけど、やってみる価値はある。


「よろしくお願いします」


 俺は頭を深々と下げると、作戦を決行することにした。

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