もう一人、期待の仲間?


 サーシャを仲間にすることが出来た俺は、彼女の案内の元、友達とやらが住んでいるところに向かっていた。

 どんな人なのか知りたくて聞いてみたのだけれど、彼女は「行ってからのお楽しみ」と少し意地悪な顔をして教えてくれなかった。

 まあ、サーシャの知り合いなら悪い人じゃないか。

 彼女を信頼して、何も聞かずに付いて行った。


 そうして数時間後、俺達の目の前には豪邸が建っていた。

 さすがにこれは予想していなくて、顔が引きつってしまう。


「さ、サーシャ? まさか、ここが?」


「はい! 友達のエレナが待ってます!」


 実はサーシャが、うっかり間違えたという可能性も無くなった。

 俺はもう一度、建物を見て大きく深呼吸をした。

 さてさて。こんなところに住んでいるのは、どういった性格の人だろうか。

 どうか、まともな人間でありますように。

 俺は祈るしかなかった。


 そして、その願いはおそらく届いたのだろう。

 屋敷の人に中へと案内された俺達を、出迎えたのは色々とパワフルな人だった。


「サーシャ、よく来たわね! 待っていたのよ!」


「エレナ久しぶり。苦しいよ」


 会ってすぐにサーシャに抱きついたエレナは、身長が俺よりも大きかった。

 しかも頭一つ分以上。

 そしてサーシャは俺の目線ぐらいの大きさだから、今現在押しつぶされている。

 この間に入っていいのか分からずに、俺はただ見守る。

 エレナは綺麗な黒い髪を、腰まで伸ばしていて。動く度に、キラキラと輝いている。

 そして美人だ。真っ赤な口紅を引いていて、それがとても良く似合う。

 しかし、俺はエレナを見れば見る度に、どことなく変な感じを覚えた。

 見た目はゴージャスな美女。だけど、どことなく男性的な何かを……。


「そこの坊や。余計なこと考えたら、潰すわよ」


「ハ、ハイ」


 口には出していないはずの考えを、まるで心を読んだかのようにエレナは見破ってきた。

 しかも、恐ろしい笑顔で釘を刺された。

 俺はカタコトになりながらも、なんとか返事をすると、サーシャに助けを求める視線を送った。


「エレナ、そろそろ離して。よいしょっと……あのね。今日来たのは、あなたに頼み事があってなの。」


 それをきちんと感じとってくれた彼女は、なんとか腕から抜け出すとエレナにこれまでの経緯を説明し始めた。



 全てを聞き終えたエレナは、難しい顔をして腕を組んで考え始める。


「まあ、スライムくっつけている時点で、大方予想はしていたけどね」


 そう言って俺を残念な目で見てくるから、たまらず目を逸らした。

 少し、いやかなり苦手なタイプだ。

 仲間にするのは、ちょっと遠慮したいんだけど……。


「他でもないサーシャの頼みだから、一緒に協力してあげるよ」


「本当? ありがとう!」


「あはは、ありがとうございます」


 何となく、そうなる予感はしていた。

 しょうがない。ドラゴンレベルを倒すのに、人は多いに越したことはないか。

 そうやって自分に言い聞かせながら、サーシャにも聞いた質問をする。


「それで。えーっとエレナさんのスキルって?」


「私? 『物を大きくするスキル』よ」


「物を大きく? それは凄いですね」


 スキルを聞いて、純粋に凄いという感想を抱いた。

 物を大きくできるのは、結構多様性もあるし便利だ。

 俺のスキルと交換して欲しい。


「一度大きくしたものは、小さくは出来ない欠点はあるけどね」


 ……その欠点があると、少し微妙だな。

 出来ることが、少し制限されるか。

 それでも、使えるは使えるスキルだ。


 異世界の生活を、どこかチートに出来ない俺は、現実逃避でくだらないことを考えた。

 大きくしたものは、小さくは出来ない。

 それじゃあ、エレナさん自身もその能力で大きくなったんじゃ……。


「次にくだらないこと考えたら、本気で潰すわよ」


「ハイスミマセンデシタ」


 どこだとしても、潰されるのは怖い。

 俺はカタコトで返事をしながら、無意識のうちに心当たりのある場所を手で抑えていた。

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