スキルを調べてみる


 サーシャが持ってきた紙は、この世界で一般的に使われるスキルを調べるものらしい。

 それに念を込めて手をかざせば、その人が持っているスキルの名称が浮かび上がる仕掛けとのことだ。

 なんて分かりやすくて、話の早い道具なんだろう。

 俺は感動しながら、早速手をかざすことにした。


「力は減ったとしても、スキルは変わらないですから。いいスキルの種類は、この世界にたくさんあります」


 隣で見守るサーシャも、へこんでいる俺を励ましてくれる。

 そうだ。

 未だにくっついているスライムのせいで、俺の華々しい異世界転移はつまずきかけたけど、まだまだチャンスはある。

 ここで、チートスキルを手に入れるんだ。

 そう決意を新たにして、紙に向かって手を伸ばす。


「ふんぬ!」


 どう念を込めればいいのか分からなくて、変な掛け声を出してしまった。

 サーシャが小さく吹き出す声が聞こえてきたが、構わず手をかざし続ける。

 そうすれば段々と、文字が浮かび上がってきた。

 なんて書かれているのか俺には分からなかったけど、それを見たサーシャが息を飲んだ。


「なに、なんて書いてあるの?」


「これは……えっと」


 彼女は衝撃から抜け出せていないみたいで、しばらく文字を見ていた。

 だけど待ちきれず聞けば、ようやく教えてくれる。


「私が読めたのは、三個なんですけど。『人混みでぶつからずに避けるスキル』『投げたものを狙った場所に入れられるスキル』『周りの影響を受けやすいスキル』って書いてあります」


「はい?」


「『人混みでぶつからずに避けるスキル』『投げたものを狙った場所に入れられるスキル』『周りの影響を受けやすいスキル』です」


 その瞬間、俺の華々しい異世界転移生活終了の文字が、頭に浮かんだ。

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