この世界の事を、教えてくれる人探し


 方向は全く分からなかったけど、何とか街らしきところにたどり着いた。俺の方向感覚は、どうやら優れているらしい。

 街は人もほどほどにいて、普通に賑わっているみたいだ。

 俺はその中を、スライムを腕にくっつけながら歩く。

 そんな俺はとてつもなく目立ってしまうらしく、突き刺さる視線が痛かった。

 その原因は、俺の格好が他の人と違うからだろう。

 今の俺の服は、放課後にトラックにぶつかられたから学生服。

 そして周りの人達は、映画で見た事のある中世のヨーロッパみたいな感じだ。

 そうなると、俺の格好は目立ちすぎる。

 これは、早めに着替えた方がいいな。

 そう考えて、俺は助けてくれそうな優しい人を探す。

 こういう時、物語の人はどうやって見つけているんだろうか。

 そこは書かれていない部分だから、想像でなんとかするしかない。

 そうなると、直感で決めよう。

 俺は一通り観察をして、とある人に近づいた。

 それは遠くの方で、こっちを気にすることなく果物みたいな食材を選んでいる、俺と同じぐらいの年の女の子だった。

 髪は赤茶色のおかっぱ、そばかすがあって小動物みたいな可愛さがある。

 ああいう野次馬根性のない人の方が、損得抜きで助けてくれそうな気がする。


 そう打算的に考えて、至近距離まで近づいてみたんだけど。

 どれだけ選ぶのに迷っているのか、全く俺に気がついていない。

 ひとつに集中したら、周りが見えないタイプなのか。

 こうなったら、気づいてくれるまで待つのも手だけど、それは時間がもったいない。


「あのー、すみません」


「……」


「あの!」


「ん? 何ですか……きゃあああああああ!」


 だから話しかけたが、こちらを見た女性は俺を見ると恐怖の叫び声を上げた。

 まさかそんな反応をされるとは思わず、驚いて後ずさってしまう。

 何で、そんなに怯えられるんだ。

 その理由は、すぐに分かった。

 彼女は俺の腕を指して、そしてまた叫ぶ。


「すすすすスライムがーーーーーーーー!」


 あ、そっち?

 俺は戸惑いながら、未だにうにょうにょと腕にいるスライムを見た。

 そんなに驚くことだろうか。

 むしろ癒されるんだけど。


 そう思って、なおも怯えている女性にスライムを近づけて笑った。


「俺、この世界に来たばかりなんで、色々と教えて貰えませんかね?」


「ひゃ、ひゃい」


 精一杯の笑顔で言えば、更に怯えた顔をされてしまった。

 ……そんな顔をされる覚えは、全くないんだけど。失礼な人だ。


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