49、ヴァンレギオス(その二)
「よく来てくれました。ゼギアス・デュラン。私はヴァンレギオス女王ラウィーア・デュランです」
は? デュランって言ったか?
それじゃ同族か……サラ以外の同族には初めて会うな。
「初めまして。俺は妹以外のデュラン族に初めて会いました」
「そうでしょうね。その辺りの事情はいずれ話すとして、今はどうしてもお願いを聞いていただきたいことがあってここまで来て頂いたのです」
なるほどね。
確かに龍気の光が見えるからデュラン族という言葉に嘘はないのだろう。
龍気の光はサラ以外から見たことない。
「お聞きします」
「まず、ヴァンレギオスの民をサロモン王国へ移住させていただきたいのです」
ほう、サロモン王国のことを知ってるのか。
そういや俺のことも知ってるのだから当たり前か。
ヴァンレギオスはこれまでデュラン族が幾種類かの魔族とともに隣国のフォモールと戦ってきた。だが、フォモール族は強く、デュラン族も国民も年々減り、とうとうヴァンレギオスのデュラン族の生き残りはラウィーアだけになり、国民も五千名を超える程度になってしまった。フォモール族へも相当被害を出しているのだが、まだ十万程度は残っていて、次に攻撃してきたら耐えられそうもない。
最近だけでなく百年ほど前から居住もしくは協力できそうな国を探していたのだが、どこも亜人や魔族をまともに受け入れてくれそうな国はなく絶望しかかっていた。そこに亜人や魔族の奴隷からの解放を掲げるサロモン王国が出てきた。ここ数年観察してきたが、どうやら信頼しても良いと考えてる。
「それは全然構わないし、仲間が増えるのは嬉しいんだけど、この国は捨てるのかい?」
「それは悩みましたが、サロモン王国でもここを守るほどの戦力を常駐させるのは無理でしょう。フォモール族は甘い相手ではありません」
「なるほどね。うちの国力知った上での決断ってわけか」
「はい、私達の今後を預ける相手のことですので可能な限り調べさせていただきました」
「うん、判った。いいよ。同族の頼みだし、断るつもりはないよ」
ラウィーアはホッと一息ついた。
これで話は終わりかなと俺も気楽な気持ちになったとき、ラウィーアの口調が変わった。女王としてと言うより一人の女性として言葉を発してる。そんな感じだった。
「……それと……ゼギアス、私をそなたの妻にしていただきたい」
「は?」
俺は国民の移住に条件なんかつけなかったのだから政治的結婚って奴もいらないだろう。
「そなたには既に六人の王妃がおるのだろう? そこにもう一人増えても構わないのではないか?」
「えーと……」
うん、それはそうなんだけどね。
「率直に言おう。デュラン族の純血種を残しておきたいのだ。この世界にはデュラン族はもう私ともう一人とそなたの家族だけになったのだ。そしてもう一人とは、リエンム神聖皇国の筆頭戦闘神官カリウスなのだが、彼の者とは繋がりを持とうとは思えぬ。つまり、そなたしかおらぬのだ」
何その、あなたと●体したい……みたいな台詞。
俺は機械天使じゃないぞ?
「だが、俺の祖母は魔族で、俺が純血種ではないよ?」
「判っておる。だが、デュラン族の血は強く、子供になら影響も出るが、孫にまでデュラン族以外の血の影響は出ない。だからそなたで構わないのだ。それとも私では不満か?」
なるほどね。
俺の子供たちでもダメなわけか。
「うーん、一応確認したいんだけどさ。第七王妃ってことになるんだけど、いいの? 今は女王さまだよね?」
「本来は兄が王を継ぐはずだったのだ。だが三年前のフォモール族との戦いで命を落としてな……。私は仕方なく急遽女王になったのだ。女王の地位などに拘りはない」
いや、将来のハーレムライフのために、ラウィーアのような可愛らしい女性も居てくれるのはとても嬉しいんだけどね。うちの奥様達はエロ……じゃない色気が強い方が多いし、やっぱりバリエーションは多い方がいい気もするし……。
「安心しろ。性技はレーティヒから十分教わっておる。そなたに不満など抱かせん」
いや、そういうんじゃないんだけどさ。
つか、レーティヒって堅そうな女性に見えたけど、そういう指導もするんだ。ふーん、スィールやリエッサが食いつきそうな話だ。
しかし、この流れで”いや結婚はちょっと……”とか言ったら、またサラやベアトリーチェから白い目が向けられそうだ。
「判った。俺も覚悟を決めた。みんなまとめて面倒見る!!」
「そうか、これから宜しくな。あ・な・た~」
……。
ノリがいいんだか、とにかく気が早いラウィーアと国民のサロモン王国移住計画について話す。
ヴァンレギオスにはラウィーアの他には魔族しか居ないが、全員人化できるので人化したままフラキア経由カリネリアに入る。ここまでは急ぐ。そしてカリネリアからはジラールを経由してザールート、そしてオルダーンまでうちのグリフォン達と共に各自のペースで移動してもらう。移動途中の食料などはサロモン王国から転送する。
ざっくりと決めたことを、ラウィーアはレーティヒを呼んで指示した。
「……以上のように、私の配偶者の国まで移動する。皆には急ぎ移動を始めるよう伝えてくれ。私はゼギアス様と共に先に行っているから、皆には心配しないでくれとも伝えてくれ」
レーティヒは頷き、再びどこかへ去っていった。
いろいろと忙しい方で、うちのラニエロと良い勝負だな。
こうして俺はまた一人の嫁と仲間を五千名手に入れた。
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