38、ジラールの復興へ(その二)

 飛竜に乗ってジラールへ帰る途中、デザートスネークが横一列に八匹並んでいるのが見えた。


 うん、バルトロの運動にきっと付き合ってるんだろう。

 バルトロの健康のためにも運動の邪魔はしちゃいけない。

 バルトロの様子も確認しちゃいけない。

 恥ずかしがり屋のバルトロを確認なんかしたら、運動やめちゃうかもしれない。

 それでストレス溜められても困るしね。


 きっと楽しそうなんだろう……でも想像してもいけない。

 元気に子供らしく、デザートスネークと戯れていると思い込んでいれば平和だからね。


 デザートスネークの明日に合掌して、俺はジラールへ飛竜を降ろしていく。


「これでジラールも落ち着くだろう」


 アンヌに状況を説明し、あとから兵が連れてくる者達を拘束しておいてくれと頼む。そして既に到着しているはずのヤルミル等三名のところへ向かう。


 三名は体力と魔力が減退する腕輪を装着させられている。

 こいつら程度じゃ身体を起こしているのも辛かろう。

 だが、知らん。


 兵に指示して、生き残った者達一万名の前に三名を引きずってこさせる。


「こいつらの元主人だった者は居るかあ?」


 誰もが確認できるよう三名を引きずって集団の中をあるきながら、俺を見る者達へ大声で呼んだ。

 何度か叫んでいると、一人の女性が弱ったからだを起こし、のろのろと歩いて近寄ってきた。俺は足を止める。


「私は、この奴隷の主人だったことがあります」


 ベンを指差しながら教えてくれた。

 俺はベンのクビを捕まえ、その女性の顔が見えるように持ち上げて


「お前の元主人か?」


「……ああ」


「生き残っていて悔しいか?」


「ああ」


「それでこの人は生き残ってるのに、大勢……四万人を餓死させてどう思う? その中には奴隷もいたし、亜人や魔族も居た。女子供も居たんだがどう思うんだ」


「別に」


「そうか。判った」


 感情に起伏がない。

 後悔もしていないようだ。

 こいつは死刑決定。


 他にも近づいてきた者が居た。

 やはり弱っていて動きは遅い。


「俺はこいつとこいつの元主人だった」


 ヤルミルともう一人というかヤルミルの弟のミラムルを指差す。


「ヤルミル。お前達は関係のない人達ばかり殺したことになるんだが、どう思う」


「お前がこいつらを助けなければ……」


 ヤルミルは元主人の顔を凝視している。

 憎々しげで悔しそうだ。


「やはり元主人さえ殺せれば、無関係な人が大勢死んでも何とも思わないのか?」


「どうせ皆こいつらと一緒だ。死んだところで俺は気にならない」


 顔を背けている。やはりどこかで気にはしているのだろう。


「お前と同じ亜人の奴隷もか?」


「ああ、すぐにこいつらに殺されてしまうんだ。早いか遅いかだけの違いだ」


 これは嘘だな。

 目的達成する手段を正当化するための理屈だ。

 本心ではない。

 ま、悔しい気持ちを抱いてお前は死ね。


 ベンよりは後悔を感じるけど、お前だけは許すつもりは全く無い。

 許されないことをやったんだ。


「ミラムル、お前もヤルミルと同じか?」


「……俺は」


「同じかと聞いてるんだ」


「同じ奴隷仲間が死んだのは辛い。でも他にどうしようも」


「単に兄貴に従っただけで、他の手段は考えなかったんだな」


「……」


 こいつもどうしようも無い奴だが、命まではとらないでおいてやろう。

 そしてこれから処刑される二人の分まで償いの生を送ればいい。

 途中で自殺するなら勝手に死ね。


 俺は兵にミラムルはこのままどこかへ置いておけと、ヤルミルとベンは皆から見える城門そばの城壁へ連れていくよう指示した。


 城壁に支えられて何とか立っているヤルミルとベンの前に俺は立ち、生き残った者達の方を向く。


「俺はサロモン王国のゼギアス・デュランだ。知っている者もいるかもしれないが、奴隷の解放を目指している。この二人は本来は助ける側の者なのだが、こいつらのやったことを俺も許すつもりはない。亜人と魔族の名誉のため、これからこいつらを処刑する」


 何かを期待してる目が、弱々しいながらも多く向けられてる。


「でも忘れるな。俺はジラールの味方じゃない。勘違いしないで欲しい。お前達があまりにも可哀想だから助けただけだ。もし、今後も奴隷を使役していくつもりなら、俺はお前達にとっての敵になるだろう。だが、もし今日のことを忘れず、また奴隷を使役していけばこいつらのように恨みを抱く者がでてくることに気づいてくれるなら、今後は奴隷の居ないジラールを作って欲しい」


 言い終わると、俺はヤルミル達のほうへ身体を向け、闇属性を付与した火系魔法をヤルミルとベンへ放った。


 長く苦しめるのは避け、ほぼ一瞬で燃えて消えるよう、俺は奴らの身体を軽く包めるほどのでかい炎を両手から放つ。せめてもの情けだ。


 炎に包まれたヤルミルとベンは、スウッと消えていった。

 ギャァァアアという叫びもすぐ消えた。

 あれなら熱さや痛みをさほど長く感じる前に死んだだろう。

 まあ、死ぬ間際の恐怖は感じただろうし、一瞬だろうと熱さと苦痛は感じただろう。


 だが、それで済んで良かったと思って貰うしか無い。

 俺じゃなく、ジラールの者達に渡したら、八つ裂きなどの苦しい手段で処刑されるだろうしな。


 一方、生き残った者達は、俺がした処刑を見てかなりの恐怖を感じているようだ。

 そりゃそうだ。

 燃えていくなら理解できるだろうが、消えていく様子は理解できずにただ恐ろしいだけだろう。


「これで処刑は終わった。俺達は処刑された者のような非道なことはしない。だが、敵に容赦することもしない。忘れないで欲しい」


 処刑を見ていた者達はザワザワと騒いでいる。

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