38、ジラールの復興へ(その一)

 ヤルミルが隠れてるところは、この男ベンが居たところからさほど離れては居ない

 ジラールの東四キロほどの場所にテントを張って、そこを拠点にしていた。


 飛竜をテントのそばに下ろし、ベンを引きずってテントの前に俺は立つ。


「ヤルミル、居るんだろ? 出てこいよ」


 俺はベンを放し、ほら、行けと顎を動かす。

 ベンがテント前まで行くと、中からベンより一回り大きな男……獣人が現れた。

 外見から、豹人と判る。

 薄い茶系の髪に日に焼けた肌、がっしりとした体型で力も素早さもありそうだ。


「ベン、中に入ってろ!」


 ベンが言われるままにテント内に引っ込む。


「お前がヤルミルか?」


「ああ、そうだ」


「何で、ジラールにあんなことをした」


 ベンはヤルミルの指示で動いていただけで、ジラールを苦しめる理由は知らなかった。


「お前に話す理由がない」


「うーん、力づくでしゃべらせてもいいんだが、できるなら自白してくれると楽なんだがな」


 ヤルミルの身体から殺気を感じた。

 手足に力を入れてる様子も判る。


「無駄だぞ?」


 一応警告だけはしておく。


 何故なら、殺気を感じた瞬間にナザレスと散々訓練した結界魔法を俺は使っている。既にヤルミルは全ての属性魔法を防ぐ”ぼっち結界”の中に居るんだ。相手がナザレスならば、しっかりと魔法力を練ってから結界張らないとすぐ破られてしまうだろうけど、戦闘神官バーミアンレベルなら日常的に体内にある魔法力程度の結界で十分。なんったってこればかりずっと三年間訓練してきたんだもの。考えるだけで発動させることができる。


 ナザレスでも破れないほど強化し維持できるようになった俺の結界を破れるのは、護龍が三頭で一斉攻撃するか、龍王クラスの攻撃力を持つものだけだ。今発動させてる結界の強度程度でも、ヤルミルにできることなど無い。


「どうかな?」


 あ~あ~あ~あ~あ~、そういう格好いい態度は、自分と相手の力関係を正確に把握できて、俺より力が上の者しかやっちゃいけない。


 恥ずかしい目に遭うよ?

 どうする?

 すげぇ格好悪いよ?


「まあ、動けるなら動いてくれ。動けたら拍手してやるからさ」


 俺の言葉にカッとなったヤルミルは動こうとしたのだろう。

 だが、俺の方には一歩も進めない。

 もちろん全方位どこにも進めないのだが。

 ヤルミルはやっと自分が動けないことに気づいた。


「ほらな? 忠告をちゃんと聞いておかないから、格好付けたのに恥ずかしい目に遭うんだ」


「離せ!」


「何故?」


「……」


「逃げるしかないから逃してくださいと言えばまだ可愛いのに、どちらにしても逃がすつもりは無いけどな」


 俺はヤルミルに近づき、ベンにしたように催眠魔法をかけ、しゃがみ込んだヤルミルから情報を聞き出した。


 催眠魔法は解除して、ぼっち結界を維持したまま。


「お前、助かるだなんて思っちゃいないよな?」


 ……馬鹿らしい。

 ……情けない。

 ……そして許せない。


 ヤルミルから知ったのは、こいつがジラールの元奴隷で元の主人への復讐であんな酷いことをしたということだった。

 数人への復讐のためにジラール五万人全員を道連れにしようとしていたのだ。

 自分は安全なところに居ながら、確実に元主人達を殺せる手段として、たまたま手に入れた蛇使いの笛を使って復讐を遂げようとした。


 こいつが道連れにした者の中には、ヤルミルと同じ境遇の亜人も居れば魔族も居たし、女子供も居たのにだ。


「クッ、殺せ!」


 クッコロさんは殺してはいけないという話を地球で見た覚えがある。

 あれは確か女騎士限定だった気がするし、こいつは男だし、例え男であってもやはりクッコロさんは殺してはいけないと言われてもそんなことは俺は知らん。


 だが今ここでは殺さん。

 こいつには自分がしたことを理解させてから殺す。


 (アンヌ、俺の指示する場所まで兵を十名飛竜に乗せて送ってくれ。それとジラール周辺にはまだデザートスネークが数匹居る。ジラールには今後近づかないようきっちり教え込んでやれとバルトロに言ってくれ。あと、バルトロには誰も近づかないようにしておいてくれ。)


 俺はアンヌに指示を思念を送り、仲間の到着を待つことにした。十数分もあれば到着するだろう。


 テントの入口から俺達を覗くベンともう一人の顔が見えた。

 そいつらはヤルミルの仲間で、元奴隷達。

 本来なら助ける対象なのだが、こいつらは外す。

 憎しみのあまりやったことだろうが、しっかりと罰はうけて貰う。

 そいつらまで今のところ殺すつもりはないが、ただで置くつもりはない。

 こいつらのやったことには情状酌量なんてものでカバーできるところがない。


 ただ、ヤルミルの仲間でもここには居ない者達が数人いる。

 そいつらは今回の惨事を手伝っては居ないらしい。

 惨事になると判ってやっていたのはここに居る三名のようで、ここに居ない者達はヤルミルが行っていたことを知らずにいるようだ。


 そいつらをどうするか。


 この惨事を終わらせてから考えよう。

 今は考える余裕がない。

 忙しいからという理由ではなく、怒りで冷静に考える余裕がないのだ。


 ヤルミルとテントの中に居た二人を、到着した兵士達に縛り上げさせジラールへ連れて行くよう指示する。


 そして残りの兵には、もう一つの隠れ家に居る、ヤルミルの仲間達を連れに行くよう指示する。怪我させなければ強引でも構わないと付け加えた。

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