45、カリネリア占領の影響(その一)

 インフラ整備、都市計画、経済支援、食料援助。

 カリネリアを占領したからにはこれらをやらなきゃならないのだが、久々に人手が足りない。ジラール復興に人手を割いてるのでカリネリアに回す人員が居ないのだ。


 特に、様々な設備の建設等を行うドワーフさん達がそろそろヤバイ状態で、今以上に仕事を増やすとストライキを起こしそう。今まではお酒を好きなだけ飲ませて誤魔化していたのだが、それももう限界に近づいている。ドワーフの奥さん達から”家にまったく帰ってこないのは困るんです。”と目を吊り上げて怒られたし。


 そりゃそうだよね。俺も次々と頼みすぎたと反省してる。


 そういう事情なので、カリネリアのインフラ整備はしばらく待っていただくことにした。


 多数の奴隷をいつでも解放できるよう、これまで準備してきたから食料支援は問題ないのだが、他はすぐには対応できそうにない。都市計画はインフラ整備を始められる状況にならないと始められないしねぇ。


 だから、経済支援というか、これからカリネリアが何で食っていく国になるかを先に手を付ける。


 今までの資金源であった金鉱山は当分閉める。

 これもインフラ整備と同様ドワーフの手が空くまでは動かさないと決めてる。理由は、廃水処理等がまったくされないまま川に垂れ流されてるからで、こんなこと続けていたら鉱害が起きてしまう。サロモン王国では廃水処理施設も排煙脱硫設備も設置してから採鉱することになっている。作業員には粉塵対策もさせてるしね。


 じゃあ、どうするんだ? という話なんだが、鉱山のある山には別の金のなる木があったので、それをカリネリアの主要産業にするつもりだ。


 金のなる木とは、チョコレートの原料カカオである。

 熱帯地域にあるカリネリアならあるんじゃないかと探したところ見つかったのだ。

 それも大量に生えていたので、次の収穫期からはチョコレートやココアの生産に取り組める。


 見つけた時は大喜びしたよね。だってケーキの生産に手を付けてるのだから、チョコレートは欲しいとずっと考えていた。ケーキのバリエーションも増やせるし、その他のお菓子もいろいろと作れるし、甘いものが少ないこの世界でならチョコレートは大人気になると確信している。


 カカオは陰樹で単一で農場を作ることはできないが、としてバナナなどと一緒に栽培できるということを考えれば良い。本当はシェイドツリーになるマメ科の高木があればいいのだが、それは現在探しているのでじきに見つかることだろう。とりあえずはカカオが成長するまでの間、日から守る樹があればいい。


 カカオの国カリネリア、俺はこれを目指すことにした。


 作物とそれを原料とした製品は、マルティナ率いるエルフチームが担当してる。

 現在はフラキアの紅茶とジラールの農地改良、土壌改良で活躍してもらってるところ。


 そう言えば、マルティナの仕事もだいぶ増えてるから、そろそろ他の誰かに仕事を分けなきゃいけない。彼女は魔法使える者のうち適性があるものには治癒回復魔法の指導もしているからラニエロほどではないにしろ忙しいのだ。あれでは旦那を探すこともできないだろうから、このままにしておくと”貴方が面倒を見てあげなさい”とサラや奥様達から怒られる気がするのだ。いや、それが嫌だというんじゃない。マルティナはエルフらしく綺麗だし、性格もとても真面目でいろんなことに気がつく良い女性だ。だけど、いくら強者は子孫を多く残すべきだとしても、奥さんとか愛人って、そうポンポン増やすものでもないと思うんだよね。


 話が脱線したので戻す。


 カリネリアで穫れるカカオの味はまだ判らないけど、オルダーンで実験してる品種改良の経験を活かしてより良い味のカカオを生産できるよう努めるつもりだ。徐々に質をあげていければそれでいい。だって、この世界ではカカオは注目されてないのだから焦る必要はない。できるだけ力は使わずに済ませたいけど、いざとなったら地球から美味しいカカオの実を複製して持ってくればいい。


 あとはヤシ。


 ヤシからはいろいろ実用的なものが獲れるが、アブラヤシからはヤシ油、ココヤシからはココナツミルクが獲れるので、この二種を栽培する。種は地球から持ってきてもいいが、この世界にあればそれを使う。特にヤシ油は欲しい。今のところオリーブオイルで石鹸作っているが、ザールートでのオリーブの生産量が……仕方のないことだが……そう急には上がらず、我が国の化粧用石鹸は超高額商品のままだ。そこでヤシ油でもと考えている。


 労働者は、鉱山で働いていた者達のうちカリネリアに残ると決めた者とサロモン王国から連れてくる。当面の人手は足りないと思うが、どうせ故自治領主がパトロンになっていた芸術家達には経済的生活能力はないのでカリネリアから居なくなるから、当分の間カリネリアは無理に稼ぐ必要はない。労働者の衣食住はサロモン王国と同じく国が面倒を見るし給与も多少は出せる。カカオとヤシの生産が軌道に乗ったら給与額はあげていけばいい。


 他にも、学校はどうするのか?などの懸案事項はあるが徐々に整備するしかないだろう。

 本格的にカリネリアに力を注ぐのは、ジラールの復興が落ち着いてからになりそうだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る