16、軍師とゴルゴン (その二)
昨夜は、諸葛亮孔明の呼ばれし者の話を寝るまで熱く語ってしまった。
どれほど凄い人物だったか、彼の話を書いた小説に夢中になった話など、多分目を輝かせて話しただろう。
サラは刀の件でそういう状態の俺を知っていたから驚きはしなかったが、ベアトリーチェは俺のそんな様子に驚きつつ口に手を当てて大きな声を出して笑っていた。
寝て起きた今でもまだ語り足りない気がするが、これ以上話すとサラから怒られそうな気がしたので自重した。
起きて、近くの森から果実をとってきて朝食にし、今日会う予定のアマソナスについて予習した。ベアトリーチェが言うには、狩猟民族でも戦闘的で強さこそ全てを決める基準と口にして憚らない部族とのこと。女性のみの部族で、生んだ子供も女子しか育てない。今は殺したりはしないが、昔は男子が生まれたら殺したらしい。今は、子供の父の部族へ送る。男性はあくまでも子種を得るための生き物としか見ていないが、部族長より強い男には服従したこともあり、ゼギアスは十分注意してほしいと言われた。
部族長に勝ったりなどしたら、部族全員の夫状態になるのは間違いないとベアトリーチェは声に険がある空気を交えて話した。
判った。
勝負は絶対にしないで逃げる。
アマソナスと協力関係築けなくてもいいやと思い始めていた。
俺は女性といちゃつくのは大好きだが、それでも種馬としてしか見ない相手とはちょっと遠慮したい。俺にとっては、お金目当てで身体を重ねる娼婦を相手にするほうがマシな気がする。他の男がどう思うかは知らんが、俺はそうだな。
予習を終えて俺達はアマソナスの集落へ向かうことにした。
厳魔の集落で場所はだいたい聞いていたので、飛竜で1時間ほど飛んだら、アマソナスの集落を見つけた。
俺が集落の中へ入っていくと、周囲から身体にまとわりつくような視線をたくさん感じた。値踏みするような女たちの視線。
ああ、これがベアトリーチェが言ってたことなのかと判った。
俺との間にはどんな子が生まれそうかしか興味の無い視線。
やはり娼婦のほうがマシだなと思っていた。
そんな居心地の悪さを感じている俺をよそに、サラがアマソナスの一人に声をかけた。交渉したいのでリーダーと会いたいと。俺が厳魔との間でしたやり取りがサラとの間で行われていた。
「お兄ちゃん。ここは私が話したほうがいいわね。お兄ちゃんとだと別の話になりそうだから」
うん、俺もそう思う。
サラすまないがそうしてくれと頼むと
「私も前に出ます。あなたは大人しくしていてください」
ベアトリーチェも少し怒った口ぶりで俺には見ていてくれと伝えてきた。
ああ、任せます。任せますとも。
厳魔には工事関係の手伝いを頼んだが、アマソナスにはリエンム神聖皇国側国境そばの前線警備を依頼するつもりでいた。サラが一通り説明している間、アマソナスのリーダーは俺を、というより俺の身体をずっと見ていた。
リーダーがこれじゃ、他のアマソナスの視線があんな感じでも仕方ないよな。
しかし、厳魔もそうだったが、アマソナスも腰巻きしか着けていない。
つまり、上半身裸なわけで、女性のアマソナスはおっぱい丸出しなんだ。
女性のおっぱいが好きな俺だ。このような情景は歓迎するはずなんだが、相手がアマソナスだと歓迎する気持ちにならない。その理由は、虫捕り草が出す虫をおびき寄せる匂いの役割にしか、アマソナスのおっぱいに感じないからだ。
皆スタイルは悪くない。
日頃から訓練している身体だ。
だが、二の腕と太ももの太さが物語る凶暴さが、俺の心を萎えさせる。
これであの俺を舐め回すような視線が無ければ違うのかもしれないが、俺は今の状況を猛獣の檻に入ってるような気分にさせられ、色っぽい感覚などまったく感じないのだ。
「お前の言うことは判った。だが、食料の代わりにその男を寄越せ。そしたらお前の取引に乗ってやろう」
こうなったか、なんかこうなる気がしたんだ。
まあ、いい。予習の段階でアマソナスとは相互不干渉で居られればそれでいいと思っていたしな。
「その要求は飲めません。申し訳ありませんが、これで失礼致します」
サラが予想通りの返事をする。
俺達が礼をして帰ろうとすると、
「大人しく取引に乗ったほうがいいぞ。さもなくば力づくでその男を奪い取る」
アマソナスのリーダー、リエッサはそう言って、部下に扉を固めさせた。
女相手に戦うのは嫌だが仕方ない、さてどかすかと俺が動こうとした矢先
「リエッサ、あなたは私に勝てるとでも思ってるのかしら?」
サラが挑戦的な言葉を返す。
うん、サラが相手では戦闘力があるアマソナスでも勝ち目は無いな。
腕力では勝てないかもしれないが、魔法か龍気のどちらかを使えば、アマソナスがどのような攻撃を仕掛けてきても触ることもできないだろう。
俺が見守ってると、
「サラさん。この女の相手は私に任せてください。夫の身体を下卑た目で見続ける神経。私は我慢できそうもありません」
ベアトリーチェがサラの前に出てきっぱりと言った。
その目には怒りがあり、引きそうもない。
しかし、俺はサラならともかくベアトリーチェには荷が重いのではと心配になった。
「リーチェ。俺がやるよ」
「いえ、これは妻の意地なのです。あなたは安心して見ていてください」
サラとベアトリーチェのやり取りを見ていたリエッサは
「面白い。私なら二人同時に相手してもいいんだぞ。じゃあ、表でやろう」
そう言って俺達を置いて先に家を出ていった。
「ゼギアスの身体を求めるにしても、そこに愛情がないと判ると、マリオンさんへのように寛大な気持ちにはなれないものですね。私は我慢の限界です。サラさん、私にやらせてください。大丈夫ですから」
じっとベアトリーチェを見ていたサラは、おまかせしますと言った。
おいおい、ベアトリーチェで大丈夫なのか? と言い出そうとしたら
「お兄ちゃん。たまには相手を信じて待つことも大事ですよ。ベアトリーチェさんを信じてあげてください」
うーん、そう言われちゃ信じて待つしかないじゃないか。
でも危なくなったらすぐ俺が替わると決めて俺も家を出た。
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