第6話 至福の時間はプリンと共に
途中で共和国軍の兵士三名と出会ったのだけど、ララちゃんがあっさりと倒してしまった。素早い動きで的確に急所を狙う戦い方は、この森林ではピッタリなのだろう。共和国ってもしかしたら私の味方? でも覚えてないし私にとっては敵にしか見えない。最初に出会った兵士もさっき出会った兵士も、私の顔を見た途端に凌辱しようとした。ララちゃんがいなかったら私はどうなっていただろう。ララちゃんは私の味方なんだ。そう思うと心が落ち着いてくる。
「メル。地図ヲ持ッテイナイカ」
「迷ったの?」
「イヤ、当テモナク森ヲ移動スルノハ効率ガ悪イ。地形ヲ見テ鋼鉄人形ガ何処ニイルノカ目星ヲツケタイ」
「そうだよね。ちょっと待ってて」
地図はリュックに入っている気がした。理由はわからないけど。私はリュックを下ろし中身を確認してみた。
「入っているのは……食べ物ばっかりね。地図はこれかな?」
やや大きめの、パネル状の携帯端末を見つけた。電源を入れるとそこには地図が表示された。
地図によると、川を挟んで両側に森が広がっている。その川の向こうにある場所に赤く大きなバツ印がついていた。
「ララちゃん。この印がそうなのかな」
「恐ラクソコニ鋼鉄人形ガイル」
「距離はどのくらいかな」
「5キロ位ダナ」
「じゃあ、あと少しだね。食べ物があったから少し休憩しようよ」
「ワカッタ」
ララちゃんの前に食べ物を広げる。パンとクッキーみたいな糧食、経口飲料水とプリンがあった。プリンを見た瞬間ララちゃんの青い目がキラリと光った。
ララちゃんは自動人形だと言っていた。それはロボット。でも、最初に出会った時は水を欲しがっていた。だったらプリンも食べるかな。
「ララちゃん。プリン食べる」
「イ……イイノカ」
「うん。二つあるから一つづつ食べようね」
「アリガトウ。メル」
ララちゃんはスプーンを使って上手にプリンを食べる。口がほとんど動かないのでチュルリと吸引しているのだけど、その姿が妙に可愛らしい。
私も一口食べてみる。
美味しい!
甘くてまろやかなこの触感は最高!!
プリンこそ至上。
世界で一番おいしい食べ物。
そして戦闘用自動人形にも愛されている食べ物。
嫌な事をすべて忘れて幸せな気分になれるこのひと時。
しかし、その至福の時間は音もなく近づいてきた一人の男にぶち壊された。
「美味しそうなプリンですね。僕の分はありませんか?」
いきなり声をかけてきたこの男は、この森には似合わない黒い軍用のコートを着ている。浅黒い肌をしていたが、若くて美形といえる整った顔立ちをしていた。
「残念、僕の分はなさそうですね。突然失礼しました。僕の名はバリスタ。帝国軍の将校ですよ」
何故、帝国軍の将校がここにいるの?
しかも単独で。
もしかして私を抹消しに来たの?
驚いてプリンを呑み込む。至福の味のはずなのに、今の私はそれを全く感じられなかった。
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