第4話 帝国軍機甲部隊との接触
遠くの方に森が見えてきた。その周囲に大きい動物が何頭もいた。
ゾウかな?
何でゾウなんて知ってるのかわからなかったけど、大きい動物といえばゾウだと思っていた。
そいつは六本脚で歩き、長い鼻が背中から突き出ていた……。
自分が知っているゾウとは違う。だって、背中から鼻が突き出ているゾウなんていない。
「ララちゃん。あれは何? 遠くにいる大きい動物は?」
ララちゃんも近くの岩に上ってそっちを見ていた。
「大丈夫ダ。帝国ノ機甲部隊ダヨ。アレハ“自走砲ガレオン”ダ。背中カラ突キ出テイルノハ155㎜榴弾砲ダナ」
「帝国軍なの。ララちゃんの味方なの?」
「ソウダ。民間人ハ保護シテモラエル。銃ヲ捨テロ。走ルゾ」
ララちゃんはライフルを捨てた。私も肩に担いでいたライフルを投げ捨てた。彼女は私の手を引いて走り出した。
ゾウの化け物みたいな自走砲が6両、そして、六本脚で背が低い平べったい形のやつが4両いた。あれは戦車クナールだとララちゃんが言ってた。
その中の戦車が一両、脚を引っ込めて浮遊しながら近づいてきた。その戦車は私たちの目の前で細い脚を出して停止した。
「私ハ、ドゥーズ型自動人形AA012、個別名称ララ。認識番号AH900139。戦闘区域内デ発見シタ民間人ノ保護ヲ要請スル。繰リ返ス。戦闘区域内デ発見シタ民間人ノ保護ヲ要請スル」
戦車の上部ハッチが開き、戦車兵が顔を出す。
「私は帝国軍第一機甲師団のサワ中尉だ。自動人形ララだな。その民間人の名は? シュヴァル共和国の人間か?」
「記憶喪失ダ。自分ガ誰カワカラナイラシイ」
「わかった。こちらでも確認してみよう。ところで貴様は何故こんな所をうろついている。特殊任務でここにきているのではないのか」
「データノ一部ガ破損シテイル。任務内容ガ認識デキナイ。一度帰還シテ再インストールスル必要ガアル」
「壊れたのか」
「ソノヨウダ」
サワ中尉と名乗った戦車兵は、携帯端末を使って私の写真を撮り、何か操作していた。そして、眉をしかめた後、私をにらみつけた。
「ララ、何故その女とここにいる。司令部に問い合わせたら返事が来たぞ。貴様は黒剣、すなわち諜報部の配下で行動している。貴様の任務は悪魔の歌姫を探し抹消する事だ。邪魔をするなと念を押されたがな」
「スマナイ。ワカラナイ」
「データが破損しているなら仕方がない。だがな。貴様が連れている女は照会出来たぞ。そいつの名前はメル・アイヴィー。貴様の抹消対象である悪魔の歌姫だよ」
え?
私の名前はメル・アイヴィー?
何で悪魔の歌姫なの?
わからない。全然わからない。
「自動人形ララが故障していることも報告済みだ。今、追加で命令書が届いた」
「何ヲスル気ダ」
「貴様に代わってその女を抹消せよとな。この命令は受領された」
戦車上のサワが私に拳銃を向ける。残り三両の戦車も私たちの周りに停車した。
ララちゃんは目の前で両手を広げて私をかばっている。
「そこをどけ。黒剣の部下であっても容赦せんぞ」
「コノ娘ハ殺サセナイ。私ハ安全地帯ヘ連レテイクト約束シタ」
何が何だかわからない。私はその場で膝をついてしまった。
もうどうしていいのかわからない。
涙が溢れて止まらない。私は嫌だ嫌だと叫んでいたのだと思う。
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