第2話 安全地帯へ
ララは私の手を引いて歩いていく。彼女は身長が140㎝ほど。体格は小学四年生といったところだろうか。頭の上にはアンテナの束が二本突き出ている。これがツインテールのようで何だか可愛らしい。
「方角はこっちでいいの?」
「アア、間違イナイ」
「だって、残骸が……」
「問題ナイ」
ララは問題ないという。しかし、ここらあたりでは戦車や戦闘機と思しき残骸があちこちに散乱している。さっきいた場所にはなかった。
突如、ララは私の手を放しレーザー剣を抜く。
「ララちゃん。どうしたの?」
「敵ダ」
残骸の陰から男が二人出てくる。
ライフルを構えた武装兵だった。ひげ面と背の低い小太りの男だった。
「へえ。こんなところで別嬪さんに出会えるなんてラッキーだな」
「へへへ。こりゃ運がいい。今夜楽しめそうだな。ははは」
「怪我したくなかったら動くんじゃねえぞ」
「はあ、たまんね」
二人の男はライフルをララに向け発砲する。しかし、ララは瞬間的に小太りの懐に飛び込んでおりその股間を蹴り上げていた。
小太りは数メートル浮き上がり倒れて動かなくなった。
「馬鹿な。こいつ帝国の戦闘人形か!?」
ひげ面はララを狙って引き金を引くがララを捉えられない。
ララは私の反対側へと迂回しつつその姿を消した。
「嘘だろ、見えなくなった」
「コッチダ」
ララは姿を現しひげ面の左脚を斬り落としていた。ひげ面がバランスを崩し倒れかけたところで、レーザー剣で心臓を突く。
ひげ面は大量に吐血して絶命した。
「殺したの?」
「戦争ダカラナ。出会ッタ敵ハ殲滅スル」
「敵だから殺すの?」
「ソウダ。殺サネバ反対ニ殺サレルゾ」
「私にはできない」
「ワカッテイル。ソンナ恰好デ戦場ヲウロウロシテイル戦闘員ハイナイ」
そう言われて自分の格好を確認する。
白いワンピースを着ている。とても戦場にいるとは思えない服装だった。背中にはリュックを背負っているし、水筒も持っている。リュックの中身は分からないけど、荒野に出てくる準備はしていたみたいだった。
「ソノ少女趣味ナ帽子ハココジャ似合ワナイ」
そう言われて頭に手をやると確かにつばの広い帽子をかぶっていた。
「こんな格好で、何やってるんだろう」
「シラナイ」
「だよね。ところでララちゃん。安全地帯までどのくらいあるの?」
「恐ラク東ニ100km程ダ。ソコニ帝国軍ノ駐屯地ガアル」
「そんなに歩くの? 私無理かも」
「乗リ物ハ探知サレ危険ダ。徒歩ガ最モ安全ダ」
「そんな……」
100㎞なんて歩けない。そう思った途端歩けなくなった。
「歩カナイト戦場ヲ抜ケラレナイ」
「でも歩けない」
「ココデ野垂レ死ニスルカ、生キ延ビテ自分ヲ取リ戻スノカ選択シロ」
死ぬ。死ぬのなんて簡単だ。
でも、自分を見つけたい。自分を取り戻したい。
そう思うと涙が溢れてくる。
「ララちゃん。貴方はどうするの」
「貴様ガ動カナケレバココデ戦ウシカナイ。タダシ、補給ナシデハアト48時間デ停止スル。生キ延ビタケレバ歩クシカナイ」
「わかった。歩くわ。自分を見つけるために」
私は再び歩き始めた。
ララが手を引いてくれる限り歩いていけそうな気がした。
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