メル・アイヴィーと自動人形ララ

暗黒星雲

第1話 人形との出会い

 ここは何処だろう?


 私は今、荒野をさまよっている。枯れた草。枯れた木々。

 乾いた大地。


 他には何も見えない。


 見当たらない。


 私はなぜここにいるのだろう。


 わからない。


 そこで一人の少女を見つけた。

 枯れ木に背をもたれて動かない。

 死んでいる?


 いや、これは人形だ。


 表面はグレーだが所々虹色に輝いている。

 チタン合金の焼き入れの色?

 チタン合金の装甲を持つ人形?


 何故こんな知識があるのかわからない。

 私はその虹色の装甲を持つ人形のそばへと近づき、その様子をうかがう。


 人形が反応した。

 青いカメラアイが弱々しく光っている。


「水、水ヲクダサイ……」


 人形が水を欲しがっている。

 何故?

 人間ではないのに。


 私は水筒を持っていた。振ってみると中には水が入っていた。その水筒を人形の口へと当てる。


 ゴクゴクと水を飲む人形。

 暫くするとその眼の光は強くなり点滅し始めた。


「貴重ナ水ヲ分ケテイタダキ感謝スル。私ノ名前ハ“ララ”ダ。貴方ノ名前ヲ教エテ欲シイ」


 死にかけていた人形が水を与えると生き返った。その事実に驚愕した。しかし、私は彼女の質問に答えられなかった。


「私の名前? 私は誰? 思い出せない」


 ララと名乗った自動人形は立ち上がり私の手を掴む。


「名前ガ思イ出セナイノカ? ココガ何処ダカワカルカ?」


 わからない。自分の名前も、ここが何処かも。


「仕方ガナイ。私ガ安全地帯マデ送リ届ケヨウ」


「安全地帯?」


「水ヲ分ケテクレタオ礼ダ。私ハ戦闘用自動人形。ココハ戦場ダヨ」


 その一言で再び驚愕する。

 どうして戦場なんかに……。


 その疑問に答えてくれる人はいない。安全地帯へと案内してくれるというララの言葉を信じるしかなかった。

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