老怪盗の盗んだ宝石は偽物だった/toro
さて、二作目もこれまた怪盗モノ。
ジャンルはミステリー。さては私の誘導が効いたか。効いたんだな。
今回の怪盗は古き良き怪盗だ。世界六大宝石のひとつ、ブラックダイヤモンドを盗む為に東京へとやってきた。彼によって語られる盗みの「やり方」は怪盗の美学のお手本ともいえるものであり、称賛に値する。
さてそんな彼は……。
《[短編]老怪盗の盗んだ宝石は偽物だった/toro》
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887573766
老怪盗の仕事は、古き良き怪盗のやりかたそのままだ。
しかしかつての怪盗は今や老い、偽物の宝石を掴まされたその背には哀愁すら見える。テレビで三流コメディアンに物笑いの種にされる姿からは、かつての麗しい姿はもう無い。ただ時代から取り残された怪盗の姿がそこにある。
良い。良いぞ。この物悲しい情けなさはとても良い。テンションが上がる。
ここまで来ると、ジャンルは現代ドラマでも良いんじゃなかろうかという気分になってくる。
さて、どうして彼がそんな――結果的に失敗はしたが、大仕事に手をかけたかというと。親バカとあるとおり、彼の娘のためだ。
しかしキャッチコピーにもあるのでどんなものかと思ったら、普通に子供を心配する親だった。まあ、危ない仕事はしてほしくないという気持ちはわかる。特に無謀さや危うさというものは、自分はともかく他人を見ている時はハラハラするものだ。それが自分の子供であれば尚更。
とはいえ私は娘の気持ちもわかる。
わかりすぎるほど、わかる。
いいよね、怪盗。そしてそれが親であれば尚更だ。もうこっちに関しては言葉とかいらない。怪盗は、いい。(強調)
さて、そんなすれ違いの二人の結末は……というところで、やっぱりネタバレになってしまうので伏せておいて、それは作者様への個人的な感想としておこう。
それにしても、コメディと現代ドラマの絶妙な匙加減がうまい。いい感じに笑えてほくそ笑むことができる。そこにジャンル通りのミステリーがちゃっかり乗っかってくる感覚があるのでもうお腹いっぱいだ。
良い作品でした。ありがとう……。
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