3「夢を与える」

 数日が経ち、ふいにあることに気がついた。

 悪夢を見なくなったのはいいのだが、それだけでなく他のどんな夢も見なくなってしまったのだ。

 苦しみから解放されて喜んだのも束の間だった。毎日よく寝ているはずなのに、少しも寝たような気がしなくなってしまった。まるで夜十一時がそのまま朝六時につながってしまったようだった。

 ある意味では悪夢にうなされるより悪かった。時間の上でどれだけたっぷり寝ようと、体力も少しも回復しないのだ。ぼくは、起きている間ずっと頭にもやがかかったような状態でぼんやりするようになった。

 フードコートで会ったあの子にもう一度会いたかった。彼女ならどうすればいいか知っているのではないかと思ったのだ。

 彼女が着ていたミッション系の制服のことを調べてみたが、どこの高校のものなのか分からなかった。ぼくははかない期待を抱いてフードコートに行ってみた。他に彼女に会えそうな場所を思いつかなかったのだ。

 閉店まで粘ってみたが、案の定思いが叶うことはなかった。帰り際にテナントで入っているCDショップの前を通りかかったとき、ぼくはVic の新曲ポスターが貼り出されているのを見つけた。

 悩み続きで忘れてしまっていたが、その日が発売日だったのだ。

 ぼくはさっそく一枚買って帰った。タイトルは「夢を与える」といった。

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