第2話 青い涙

 翌朝は朝寝坊した。メリッサは隣でシーツに包まり可愛らしく寝息を立てている。寝顔を見ていると思わず手を伸ばしそうになるがやめておいた。


 シャワーを浴びて頭をすっきりさせてから、スマートフォンで口座への入金を確認する。マットの手数料10%を引いた4万5千ドルが入金されていた。依頼用のファイルサーバにアクセスすると今回の依頼の詳細データも入っている。


 ターゲットは50カラットのブルーダイヤモンドである青い涙。現在の所有者はD.L.マイヤー。大金持ちのお嬢様だ。もっとも所有者と言っても現在は信託中で20歳になるまでは手を付けることができない。管理者は叔父のサミュエルか。


 ハイティーンの黒髪の少女と気障な中年男性の写真が添えられている。まあ、別にこの娘に求婚するわけじゃない。とりたてて重要な情報じゃないな。次に移ろう。


 サザビーズの広告記事が青い涙がオークションにかけられることを告げていた。オークションの期日は15日後。つまり、その日以降は誰が所有者になるか分からなくなるわけか。そこがデッドラインという訳だ。依頼者は青い涙をどうしても手に入れたいらしい。


 青い涙はニューヨーク郊外のスカースデールにあるマイヤー家の屋敷に保管されている。24時間の有人警備と番犬、監視カメラ、赤外線センサーを掻い潜らないとたどり着けない2階の書斎の奥の金庫の中で、誰かの到来を待っているわけだ。まあ、一度下見はしなくてはいけないだろうが、この程度なら問題はない。


 まあ、今日は休暇を楽しむことにしよう。メリッサが起きたらゆっくりと朝食をとって、それからメトロポリタン美術館で心の洗濯だ。明日から準備をして実行しても十分間に合う。まだ、13日あるんだ。13か、少々不吉な感じがしなくもないな。

 


 

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