第37話 168回芥川賞の候補作予想

 いよいよ168回芥川賞の候補作が12月16日(金)に発表されるということで、私も予想をたてることにしました。


 私の予想は


【光の痕】 島口大樹さん

【カプチーノ・コースト】片瀬チヲルさん

【ビューティフルからビューティフルへ】

 日比野コレコさん

【黄金比の縁】石田夏穂さん

【植物少女】朝比奈秋さん


 にしました。


 理由を書いていこうと思います。


 まず今回は島口大樹さんの【光の痕】。

 これは候補作としては大本命だと思いました。


 島口さんは前回上半期の時に、【遠い指先が触れて】でファンの間で入って欲しいと期待されましたが入りませんでした。


 その点からも島口さんの次回作はかなり注目されていたと思います。

 そこにきての今回の【光の痕】。


 ちょっと田中慎弥さんの【共喰い】を思い出すような薄暗い世界観で、前作とは違う雰囲気の作品でした。


 魅力も救いも希望も少ない人物や内容ですが、その曇り空の世界でありきたりなテンプレ思考や展開に行かないところに負のリアルさを感じました。


 こういったところが文学としてこの作品を無視できない作品にしていたなと思い、私は『候補作として』大本命だと思いました。



 つぎに片瀬チヲルさんの【カプチーノ・コースト】は休職している事での自分の社会的肩書きを名乗れない後ろめたさと、そもそもがそういったものを人に言いたくない気持ちと、それを尋ねてくる他人の描きがとても良かったです。


 そしてゴミ拾いを通じて、偽善者について考えるキッカケをくれた作品でした。


 問題提起と最後に未来への小さな希望と立ち上がりが描かれているところは過去の芥川賞受賞作の中にもいくつかあるタイプのいい小説だと思い選びました。



 次に日比野コレコさん【ビューティフルからビューティフルへ】は新人賞枠として選びました。


 今回、新人賞受賞作はどれが入ってもおかしくなく、一作品じゃなく複数入る事もあり得ると思いましたが他の候補作にも良い作品が多過ぎてあえて私はこの作品だけを選びました。


 理由は読者に刺さる名言をいくつも作品中に散りばめている言葉のチョイスの素晴らしさと、10代の思考への引っ張りが秀逸だったからです。


 本当はあの作品も、あの作品もという思いはあるのですが「言葉」の力の点では日比野さんが一歩抜けていたように感じました。



 次は石田夏穂さん【黄金比の縁】です。

 私はこの半年で石田さんの作品全て読みましたが、もう石田さんは間違いなく面白く惹きつけられます。


 しかもこの黄金比の縁は前作の【ケチる貴方】よりも良くできていて、最後まで読ませてくれた作品でした。

 完成度も高く、候補作として外せない作品であり作家さんではないかと思い選びました。



 最後は朝比奈秋さん【植物少女】です。

 私はこの作品を文學界の新人小説月評で知り、慌てて小説トリッパーを購入して読んだのです。


 内容はもちろん良かったのですが、最後がとても良かった。


 今回の芥川賞候補作予想をしている方々の間でも評判が高い作品ですが、掲載誌が小説トリッパーであるという事で迷われている方もいると思います。

 私も迷っていました。


 ですが多くの純文学ファンの間で、小説トリッパーが無視できない雑誌になってきているいることからも、この植物少女は作品が良かったそのままに、候補作として挙げても良いのでは無いだろうかと私は考えました。


 それぐらいに威力と奇抜さと惹きつけのある作品です。



 というわけで悩みましたが、いち素人読者の私が選ぶ第168回芥川賞候補作は


【光の痕】 島口大樹さん

【カプチーノ・コースト】片瀬チヲルさん

【ビューティフルからビューティフルへ】

 日比野コレコさん

【黄金比の縁】石田夏穂さん

【植物少女】朝比奈秋さん


 にしました。


 発表が楽しみですね。

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