第60話case2—9 これは僕のわがままだ。
翌日、僕は浦山と学校で集まり、梨田と会って、わかったことを報告した。ほかの二人は、この日は休んでいた。あとでメールで報告しよう。
「つまりここが、星川たちにつながる唯一の窓口ってことか」
浦山が僕の教えた、ミルキーウェイのサイトを見ながら言う。
「そうだ。このサイトがもし閉鎖されていたら完全に詰みだったけど、星川が死んだことになったあとも、このサイトの運営者は、相談者に返答をしている。上手く使えば、星川を引っ張り出せるかもしれない」
「どうやって?」
「簡単なことさ」
僕はミルキーウェイのページの三つの相談を指す。
「この三つは、僕の書き込んだ偽の相談だ」
浦山が息をのんで、その書き込みを見始めた。
「ばれないのか?」
「少なくとも同一人物が書いたものには見えないだろうね。一つ目はちょっとした相談風だ、登録してあるメールアドレスは家のパソコンのものだ。二件目は深刻な事件を装っているがメールアドレスが捨てメアド。三件目は一見何でもなさそうに見えるが、深刻になりそうな案件だ。ここのメールアドレスは、この前買った二台目のスマホのものにしている」
「どうしてメールアドレスを登録しているんだ?」
「このサイトのスタイルは、基本的には登録なしでも返答が受けられるが、それはトップページの掲示板に載せられる。でも、メールアドレスを登録すると、運営者とメールのやりとりができるようになる。こちらはもちろん非公開だ。何かやりとりがあったとしたら、ここしか無い」
浦山は、僕のいったことを咀嚼するようにうんうんと考えている
「なるほど……でも、自体の大きさを分けた理由は何なんだ」
「運営者の基準を見るためだ。第一基準は事態の大きさ。第二基準はメールアドレスの問題だ。例えば、二本目だけメールの返信が無ければ、彼らは第二基準だけを見ている。一本目だけ返信が無ければ、彼らは第一基準だけを見ていて、全部返信が無ければ、事態が大きくて、さらにメールアドレスも本物のしか返信していない、かなり用心深いものとなる」
「そうか……でもさ」
浦山はそこでこちらを見た。
「三本目は、一体何の基準なんだ?」
それはもっともな疑問だ。今までの日本には、明確な基準があるが、これはとても微妙だ。だから僕はこう答えるしか無い。
「これは、僕のわがままみたいなものだ」
もしここの運営が、既に星川の手から離れているのなら、このメールは返信しないだろう。情報が漏れるリスクは少ない方がいいのだから、ひどくならないかもしれないこのメールに返信する必要は無い。でも、もし星川だったら、このメールには絶対返信する。二度と間に合わないなんてことにしたくないと思っている正義の味方なら、絶対にこれは返信する。
そのとき、鞄の中の二台目のスマホが、メールが来たことを告げた。
来たか。
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