第45話 case1—6

「フランスパン様、いつも楽しく動画を拝見させて頂いております。そのお礼と言っては何ですが、こちらのコードを贈らせていただきます。先日入手したもので、一点モノではないようなので、フランスパン様も使えると思います。では、また」


 そんな謎のメールが届いたのは、俺が学校から帰ってすぐのことだった。


 今朝は大変だった。


「さあて、ホームルームの時間です……その前に、梨田くん」


「はいっ」


 だらけ気味だったところに声をかけられて、思わず垂直に立ち上がってしまった。


「こちらをお返しします。ああ、宣言通りエロ画像があったとしても、見たりしてないので」


「だからねぇから!」


 教室中が笑う。


 向こうは未だ教師らしくしているというのに、こちらは素を出してしまった。化かし合いにすらならないとは。


 そこに、担任の咳払いが入った。


「おっと失礼。では、連絡事項を伝えます」


 それからはいつも通りのホームルーム。いつも通りの生活だった。ただ一つ、イレギュラーなことと言えばこのメールだ。


 フランスパンというのは、俺の動画配信者としての名前。でもそこで、自分のメールアドレスなんて公開していない。怪しすぎる。


 でも、特にファイルとかがあるとかではないので、地雷の率は低い。詐欺にしてはぬるい。


「まさかシリアルコードをゲームに打ち込んだらトラップ発動とかいうやつはやめてくれよ」


 それならそれで、運営なり警察なりが対応するだろうが。


「まあとりあえず、打ち込んでみますか」


 どうにかなるだろうという謎の安心感と、怖いもの見たさで俺はコードを打ち込んだ。


 すると。


『レアキャラゲット!!!』


「へ?」


 本物だった。


 謎のメールはその後、一週間に一回ほどのペースで来るようになった。つまりその人物は、それだけのペースで、ガチャを回しているということだ。


 ふー……。


 俺、梨田方一、動画配信生活二ヶ月目にして、謎のパトロンを得る。


 ……ダメだ、見るからに怪しい。この一週間は。


 でも、それが事実だし、キャラは来る。


 全く、笑うしかない。


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