第44話 case1—5

 結局、俺が裏サイトに上げたのは、二人が密会しているシーンだけだった。理由としては、決定的な瞬間を撮影できなかったから。


 しかし、これだけでも十分な成果にはなるだろう。男の方は千里に押されて、あまり注目されていないが、女の方は可愛いと男子に評判だ。今まで懐いていた生徒が、不意に態度を変える。それだけで衝撃は相当だろうし、うまく行けば騒動が起きる。


 裏サイト状の反応は大方予想通りで、驚愕、怒り、制裁の動きを見せていた。


 これなら明日は面白いだろうな。


 ニヤつきながら俺は裏サイトをとじ、ゲームを開いた。最近新しいイベントが始まったから、周回しなきゃいけない。ちょうどスタミナが全回復しているころだろう。


「はい没シュート!」


 と、後ろから手が伸びて来て、俺のスマホを取り上げた、


「なっ!」


 振り返ると、そこには千里がいた。


「ダメだぞー。学校でゲームなんてしちゃ」


 千里は俺のスマホの画面を見ながら言った。


「まあこのゲーム面白いし、今イベントやってるからわからんでもないが」


「え、千里先生もやってんの?!」


 ああ、と、笑いながら千里は答えるが、こちら的には驚きだ。


「じゃあ先生、見逃してくれたりしない? 

 プレイヤーのよしみでさ」


「見逃すわけないだろ。教師としての業務と私生活は別だ」


 千里は笑いながら断った。全く、よく笑うやつだ。


「安心しろ。エロ画像とかあっても触れ回ったりしないからさ」


「ねぇよ! てか見んなっ!」


「はははっ」


 千里は高笑いしながら去っていった。


 ……ったく。明日には返してもらえるかな。


 まあとくに見ないと言ってたし、万一にも見られるとまずいものは鍵をかけているから、端末を取られてもなんとかなる。


 それに千里だから、そんなことはしないだろう。


 俺はため息をつきながらも、なんの心配もなく帰宅した。





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