第42話 case1—3

そんなこんなで俺は、いつも通り、放課後の日課の張り込みをしている。毎日欠かしたことはないが、うまく釣れるのは一月に二人いればいい方だ。


基本的には誰も現れないので、俺はカメラの手入れをしていたりすることもあるが、大体はゲームをしている。


『Monde restreint』は、最近俺がはまっているゲームで、プレイヤーたちは、崩壊直前の世界で、緩やかな終末を迎えるか、僅かな望みをつなぐために、戦いを選ぶかという選択を迫られる。そして、選んだ陣営を勝利させるために、戦いに身を投じていくというストーリーだ。


未だ完結していないストーリーを気に入り、プレイしている人もいるが多くがこのゲームをやる理由はオンライン対戦にある。


このゲームは、オンライン対戦にしろストーリーにしろ、ある共通の対戦スタイルをとる。


カードゲームというスタイルだ。


よくあるそういう類のゲームと同じように、このゲームも、ガチャを引いて、カードを引き、それでデッキを作る。そんなゲームの弱点は、環境の固定化だ。強いカードを引いたやつが強い。それがマンネリ化したら終わりで、プレイヤーはいなくなる。


だからこそ、運営は環境の調整に躍起になるのだが、それでもパターン化は避けられない。


だからこそ、このゲームの運営は頭を使った。


即ち、環境を確定させないやり方だ。


このゲームのガチャでは、カード以外にシリアルナンバーが排出される。


それは、公式から発表されていない、裏カードを入手することのできるもので、子の存在が、環境を不確定にしている。


シリアルナンバーには二種類あり、『量産モノ』と、『一点モノ』がある。


どちらも非公開のモノに変わりはないが、稀少性が違う。


実は『量産モノ』はかなりの数出回っている。ネットでは二百回回せば一枚は出てくると言われているので、引こうと思えば引ける。しかし、『一点モノ』に関しては、まず確認する手段がない。運営側がそれを明かしていないからだ。


検索しても見つからず、誰も持っていないもの。それで推測するしかない。


この奇異なシステムに惹かれたものたちが、定住している。だからもうしばらくは衰えそうにない。


ともかく、俺はゲームをプレイして、だれかくるのを待っていた。


「ん?」


ビンゴ。誰か釣れたらしい。

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