第24話 それでも、僕は

「葵と響ちゃんが知り合いだったなんて、本当に驚きだよな……おいどうした? 口が半開きだぞ」


 そう言われ、僕は自分のことに意識を向けた。


 どうやら少し考え込んでいたみたいだ。


 やはり衝撃的ではあったのだろうと、僕は自分の状態を確認してやっと理解した。


 乃田の話の内容を理解する事に、今までエネルギーを使っていなかったから、今更のように意識を持っていかれいて、自分のことに頓着しなくなっていた。


 だってそうだろう?


 僕のスタンスを決めたあの少女が、乃田の姉で、おまけに死んでいて、星川とも知り合いで……入ってくる情報が多すぎる。


 でも、やっぱりあの夢はどこにも繋がらない。


 今更それを知って、どうしろというのだ。


 その心の声は、どうやら口から漏れていたようだ。


「決まっている。星川を助けるしかない。俺たちは……お前はもう、無関係とはいえないところまで踏み込んでいる。逃げることはできない」


「……そうなんだろうね」


 でも、具体的に何をしろと?


 僕は彼女に何ができるというんだ。


 たかだか一介の高校生が、人を助けるなんて、あまりに傲慢だ。そんなの、何もできないくせに、何もしないくせにただわめいていた、あのファストフード店の客たちのようなものだ。


 だから僕と浦山の会話は、それで終わって、浦山を見送る時、彼が言った、「俺も考えるからさ、お前もな」という言葉は、彼の一方的な発言だ。


 翌日。日曜日を迎えた僕は、スマホを確認した。すると、僕が眠りについた直後に、三野さんから連絡が来ていた。


「明日の朝八時に、中央病院の二〇一号室に来てください」


 と、そこには書かれていた。


 時計を見ると、針は七時半を指している。病院までは十五分ほどかかる。加えて、朝の支度、朝食などに十五分以上。遅刻濃厚だ。


 僕は三野さんに少し遅れる旨を伝え、身支度を始めた。


 結局、病院に着いたのは八時五分を過ぎたぐらいだった。


 受付で面会リストに名前を書いて、二階へと登っていく。


 目的の部屋は、一番端にあった。


 部屋の扉は開いていたけど、念のためノックをした。


「どうぞ」


 と、久しぶりに聞く声がする。


「失礼します」


 僕は廊下から個室の病室に入って、ベッドにいる井川さんと、脇に座る三野さんを見つけた。


「あれ、浅井くん。こんにちは」


「井口さん、こんにちは。三野さんも」


 ニコニコしながら手を振る井口さんと、頭を下げて、会釈をする三野さんに、僕は挨拶した。


 でも、次の僕の発言は軽率だったかもしれない。星川のことがあったからか、まあまあが低くなっていた僕の声を聞いて、井口さんの顔が曇ったのは間違いなくそのせいだ。


それでも、僕は、前に進むために聞かなきゃいけない。


「それで、君はなんで自殺未遂をしたんだ?」

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